貴重な4座オープンは楽しいが北米よりもかなり高額な価格がネック
試乗車:シボレー カマロ コンバーチブル(602万6400円)
シボレー、ビュィック、GMC、キャデラックというブランドを持つ米国GMにおいて、シボレーはもっとも親しみやすい、日本でいえばトヨタのようなブランドだ。
その中で1967年の登場以来、現行モデルで6代目となるカマロは、フォードマスタングに強い影響を受けたポニーカー(昔の馬のように、多くの若い人が比較的気軽に買えるカッコいい2ドア車)と呼ばれるジャンルに属す。アメリカではシボレー カマロ、フォード マスタング、ダッジチャレンジャー(日本では最近135km/hスピード違反事件というちょっと変な意味で名前を知られたあのクルマだ)がポニーカー三強を形成している。
かつての日本なら90年代まで、トヨタ・セリカ、日産シルビア、ホンダ・プレリュードが、スペシャリティカーとかデートカーと呼ばれたジャンルを構成していたのと同じような話だ。
カマロは全長4780mm×全幅1900mmというボディサイズなどを見ると一見「高級な2ドア車」のようにも感じてしまうが、アメリカの価格はクーペのベーシックグレードのMTで約2万7000ドル(1ドルを106円とすると日本円で約286万円)と、これはマスタングやチャレンジャーも同等で、イメージよりは安いクルマだ。
またポニーカー的な要素もあるトヨタ86のアメリカでの価格もMTで約2万6000ドルからと、アメリカのポニーカー三強に近く、アメリカ市場では「ジャンルは同じながらサイズが全然違っても、価格は同等」ということがある点で、日本人からすると面白い。
その6代目カマロだが、アメリカでは2015年5月に登場し、日本への導入は2017年11月に開始された。現行カマロはコンセプト自体こそ以前からさほど変わらないが、GMの中でも新しいプラットホームやアルミ部品の拡大採用による軽量化など、普通の日本人が持つアメ車に対するイメージからすると、失礼ながら技術的にも進んでいる。
エンジン、トランスミッションといったパワートレインもイメージ以上にヨーロッパ車のようで、日本仕様のエンジンはそれぞれ8速ATと組み合わされる、いかにもアメ車らしい6.2リッターV8OHV(最高出力453馬力/最大トルク62.9kg-m)と、メインになる2リッター直4ターボ(最高出力275馬力&最大トルク40.8kg-m)の2つだ。クーペにはそれぞれが、今回試乗したコンバーチブルには2リッター直4ターボのみが設定される。
※アメリカでは3.6リッターV6や6.2リッターV8スーパーチャージャー、MTもある。
カマロコンバーチブルは、乗ってみるとアメ車らしい魅力を持ったなかなか面白いクルマであった。
まず2リッター直4ターボはどちらかというパワー重視の部類に入るチューニングのためもあるのか、ヨーロッパ車の2リッター直4ターボのような低回転域からモリモリと感じるトルクの太さはない。しかしアクセルを深く踏んだ時の絶対的な速さは、車重が1670kgとサイズやオープンカーなのを考えれば意外に軽いこともあり、なかなか速い。またステアリングフィールと呼ばれるハンドルに伝わる手応えや操作感も、FR車らしくスムースかつ正確で好感を持った。
乗り心地は基本的には快適なのだが、ボディの後半に弱さがあるのか、時おり「ガタン」という不快なショックを感じるのはちょっと残念だった。まあアメ車らしくというか大らかな気持ちで細かいことは気にせず、貴重な4人乗りでのオープンエアモータリングなどをしながら主に雰囲気を楽しむクルマと考えれば、大きな問題にはならないだろう。
ただ1つだけ大きな問題に感じてしまうのがやはり価格だ。アメリカで今回試乗したのと同等の仕様と思われるコンバーチブルの2リッター直4ターボの価格は、日本円に換算するとザッと400万円というところ。けっして多くない輸入台数で日本仕様へ変更する手間などもわかるのだが、アメリカよりも200万円高の約600万円というのは、ダッシュボードに代表されるインテリアのクオリティも甘く見てトヨタ86並というところも考慮すると、いかんせん高い。
もちろん日本ではサイズの問題などもあり、アメ車やカマロがGMにとって大きな数が売れるとは思いにくい。しかし自分の過去を振り返ってみると、筆者は仕事で先代マスタングのV8+MTというマニアックな仕様に乗った際に心底ハマってしまったことがあり、とくに男性は口にはなかなか出さないにせよ、アメ車に対する憧れや関心を持っている人というのは潜在的には日本にも少なくないように思う。
そのあたりは「卵が先か、鶏が先か」のようなところもあるのだろうが、カマロであれば全体に価格があと100万円下がれば、日本でももう少し売れるようになる気がした。