メルセデスとの今後の関係性を示唆する1台といえる
アストンマーティンは、2018年シーズンのWEC(世界耐久選手権)開幕戦となったスパ・フランコルシャンで新型Vantage GTEをデビューさせた。このVantage GTEをベースにしてカスタマー向けに開発されるのが、新型アストンマーティン Vantage GT3およびGT4マシンだ。
搭載されるエンジンは、メルセデス・ベンツのAMG社製4リッターV8直噴ツインターボエンジンとなる。デリバリーは今年の夏から始まる予定で、実戦投入は2019年3月1日からのレースにエントリーできるよう型式認証を受ける予定だ。
これまでのVantage GT3マシンは、コスワース社(独立エンジン開発サプライヤー)と共同開発したV12気筒レーシングエンジンを搭載していた。しかし新型のVantage GT3/GT4マシンには、アストンマーティン社の次世代スポーツカー向けに用意されるメルセデス・ベンツ製のV型8気筒エンジンをツインターボで武装したAMG製レーシングエンジンが搭載される。
ベースとなったAMG製エンジンは、メルセデス・ベンツのロードゴーイングカーとしては最強モデルで「公道走行が可能なレーシングモデル」と言われる「メルセデスAMG GT R(消費税込み2300万円)」に搭載されているものだ。このメルセデス・ベンツとの関係は2016年デビューの「DB11」から始まっており、5.2リッターV12気筒ツインターボエンジンの搭載から始まった。もちろんこの技術提携は、メルセデス・ベンツの親会社であるダイムラーが、アストンマーティン社の株式を5%所有している関係から始まっている。
アストンマーティンは、2020年半ばまでには全6車種のモデルをハイブリッド化するとすでに発表済みで、さらに2020年終盤までには全車種の4分の1のモデルをEV化するとも明言している。EV化は自社開発とともにF1チームで有名なウィリアムズの関係会社である「ウィリアムズ・アドバンスド・テクノロジー」と
タッグを組むとされているが、ハイブリッド化の技術は明らかにされていない。だが、今回のメルセデス・ベンツとの株式、技術提携を鑑みると、アストンマーティンの今後の市販車のハイブリッド化技術はメルセデス・ベンツとの関係を示唆するものと思われる。
そうなるとアストンマーティンのハイブリッドモデルは、メルセデス・ベンツ社がS450に搭載した直列6気筒+48Vハイブリッドエンジンで、シリーズ最高出力367馬力(270kW)のシステムが移植される公算が高くなってくる。
アストンマーティンの象徴ともいえるV型12気筒エンジンは、これからも自社開発を続ける一方で、EVやハイブリッド車の市場投入など高級スポーツカーメーカーといえども環境問題は避けては通れない状況となっている。すでにアストンマーティンでは「ラピードE」として2019年のデビューに向けて開発が進められているゼロエミッションのEV高級サルーンカーでは、ロールス・ロイスやベントレーといったライバルよりも一歩先んじている。さらにメルセデス・ベンツの力を借りて、2020年に向けてハイブリッド化を加速させていくのかもしれない。