新規格に合わせたクロスオーバー軽の「Kei」登場
1990年代に入ると、自動車の大切な要素として「安全性」がクローズアップされていく。1995年から衝突試験のJNCAPが始まる。当初普通車だけだったが、軽自動車にも適用されることになった。
そこで問題が持ち上がる。衝突安全性を高めるためには、衝突時に衝撃を吸収してキャビンを守る「クラッシャブルゾーン」が必要。だが軽自動車はサイズが小さすぎて、その確保が困難……というもの。そこで軽自動車は、排気量660ccのまま、サイズを全長+100mmの3400mm、全幅+80mmの1480mm以内の新しい規格へと移行する。1998年秋、サイズを拡大した新規格軽自動車が一気に登場する。そして、スズキのクルマのなかにあまり目立たない1台のクルマがあった。それがスズキKeiである。
安直なネーミングだが、これが現代に通じるクロスオーバーのコンセプトを軽自動車に初めて採り入れたクルマだった。大径タイヤを履き高いロードクリアランスと全高を持つ。通常の道でも快適で、少々のラフロードもこなす。11年間の長きにわたり生産され、爆発的なヒットを呼ぶことはなかったが、このコンセプトをスズキはあきらめなかった。
1998年 Kei
新規格軽自動車登場時にひっそりとデビュー。一見すると2ボックススタイルを採用する普通の軽自動車のようだが、4WDで全高1550mm、大径のタイヤを履き最低地上高は185mmを確保するという、まさにクロスオーバー軽自動車の元祖と言えるクルマ。2WDもラインアップし11年間生産されたが、内外装の遊び心に乏しく、大ヒットとまではいかなかった。
2000年 グランドエスクード
2代目エスクードの5ドアより、全長を485mm延ばし、3列シート仕様の7人乗りとしたSUV。搭載エンジンは2.7L V6のみ。海外向けには「グランドビターラ」という車名を名乗った。
2000年 初代スイフト
プラットフォームは異なるものの「Kei」と同様のドアやサイドパネルを使用し雰囲気もよく似ている。4WDモデルの最低地上高は175mmとやはりSUVテイストだ。5ドアハッチバックのみのボディに、当初は1.3L+4速ATのみだったが、5速MTモデルも追加され、「スポーツ」は専用チューンの1.5Lを搭載する。
2001年 シボレー・クルーズ
当時提携関係にあったスズキとGM。シボレーと名が付くが中身はスズキ。デザインをGMが担当した初代スイフトベースのコンパクトSUVで、スズキの販売店でも扱われた。エンジンは1.3Lに加え1.5Lも搭載された。