エアバッグメーカーは自動車本体の寿命より長いとの回答
いろいろなモノに期限が設定されていますね。加工食品には賞味期限というのがあって、想定された味覚を保持する日が表示されています。地球上にあるすべてのモノは、時間と共に変質・劣化していていく運命にあります。いや、地球そのものだって、余命は45億年とも、20億年とも言われています。人類の文明を地球上で営むのは、その半分程度が限界でしょうか。最近日本には「地球に優しく」するのが好きな人が増えているような感じがしますが、人類が実現できる程度の内容では、わずかに延命させることすら難しいでしょうね。
クルマの寿命は、どうでしょうか? 防錆性能を高めてきたことでボディ自体の寿命は伸びていますね。ボディはクルマの骨格ですから、さまざまなユニットはオーバーホールし続ける前提なら、クルマの寿命は20年でも、30年でも、80万kmでも、100万kmでも、問題ないことでしょう。ちなみにボディ剛性は、低いほうがボディの耐久性は高くなります。それは剛性値が低いので、それを維持しやすいだけでなく、ボディ剛性が高いとどうしても弱い部分に負荷が集中してしまい、結果的に剛性を維持することが難しいためです。
クルマが装備しているユニットにも、当然寿命があるハズです。気になるのは安全に関するユニットですね。ブレーキであれば、不具合になりそうだと警告灯が知らせてくれるし、突然効かなくなるようなトラブルは起きにくい構造になっています。コンピューターによってクルマの重要なユニットは常に監視されていて、不具合が発生しそうな兆候があれば、すぐに警告を出します。それはメモリーに記録され、サービスマンなどが内容を知ることができます。
それでは、エアバッグの消費期限はどうなっているのでしょうか? エアバッグシステムは事故が発生した時に、乗員が車内の構造部品などに衝突しないように、火薬を使って急速に膨張させた袋によって、緩衝・保護するための安全装置です。あくまでもシートベルトを装着していることが前提になっているので、逆にシートベルトをしていないとエアバッグに近づきすぎて強い衝撃を受けたり、エアバッグが胸部などに向けて展開してしまうなど、エアバッグによって怪我をする可能性が高くなります。
自動車の一般的なエアバッグシステムは、センサーなどの電子回路、ガスを発生させるインフレーター、そのガスを受けて膨らむバッグによって構成されています。1度使用すると再利用できない使い捨てのシステムになっています。もちろんエアバッグシステムもコンピューターで監視され、不具合が起きそうになると警告灯が点きます。
ただ走行するだけなら、エアバッグシステムが作動しなくても問題はない? と思われる可能性が高いでしょうね。確かに事故発生時にエアバッグが展開しない可能性が高い、というだけなら事故を起こさない限りは問題ありません。しかしエアバッグシステムの故障によって、もし通常走行中にエアバッグが誤作動で展開してしまったら、大変なことになります。
火薬を使ってガスを発生させる、という化学的なシステムなので、消費期限が気になりますよね。しかし、いくつかのエアバッグ生産メーカーに問い合わせたところ、異口同音に同じ答えでした。まずエアバッグの寿命については、「自動車本体の寿命よりも長い」という回答でした。次に自動車の寿命について質問したところ、「自動車メーカーの製品に関することは答えられない」ということでした。
要領を得ませんが、つまり「ユーザーごときが気にする必要はない」ということなのでしょう。社会的に無責任な回答であることは間違いありませんが、日本の企業というのはそんなものかもしれません。ただしヨーロッパの某超大手サプライヤーの日本支社は、無回答でした。
さて輸入車の中には、エアバッグシステムの消費期限を明記している自動車メーカーもあります。10年から15年というのが、その期間となっているようです。一種の保険のようなものでもあり、実際の作動テストができないので、エアバッグシステムは厄介ですね。ほとんど内容のない原稿になってしまいましたが、もしかするとエアバッグシステムはまだ技術的に未熟なのかもしれません。そういう意味では、しっかりとした姿勢で座り、キッチリとシートベルトを装着することが、より重要なのかもしれません。