世界最大の自動車市場「中国」に根源がある
日本でEVといえば、日産「リーフ」やテスラ「モデルS」など、まだまだ少数派。ところが、世界に目を向けるとジャーマン3(ダイムラー・BMW・VWグループ)がそれぞれ2020年代前半までに数十モデルのEVやプラグインハイブリッド車を発売する。
英国ではジャガー・ランドローバーがEVの「ジャガーI-PACE」を使ったレーシングカーを仕立てて、世界電動車選手権「フォーミュラe」で2019年からEVワンメイクレースを開始する。アメリカでは、EVベンチャーの雄であるテスラは、普及モデルの「モデル3」量産を急いでいる。
さらに、中国ではEVバブルが勃発。オートチャイナ2018(通称:北京モーターショー)では、中国地場大手や中国EVベンチャーから多彩な新型EVが出展された。ここへきて、一気にEVシフトの様相となっている世界各地の自動車産業界。その背景にあるのはいったい何か?
90年代頃まで、EV普及の理由として「石油の枯渇」が話題となった。しかし、最近では「環境対策」が最重要課題として取り上げされることが多い。中国とインドという人口ランキング世界ツートップが、2000年代に入って急速な経済成長を遂げたことで、自動車や工場が排出する有害物質や温暖化ガスが大きな社会問題となってきた。その解決策のひとつとして、EVに注目が集まるのは当然だ。
こうした環境対策を基盤としたEV推進では、米カリフォルニア州環境局が1990年に施行したゼロ・エミッション・ヴィークル規制法(ZEV法)がある。日系メーカーを含めて、世界の主要メーカーにとって販売台数が多い同州が規定するZEV法に従うことが当然だ。長年に渡って「EV普及はZEV法ありき」が、自動車メーカーにとって決まり文句となっていた。
そのZEV法の中国版といえるのが、新エネルギー車規制法(NEV法)だ。中国政府が所管する国家自動車研究所と、カリフォルニア州環境局の実質的な研究開発部隊であるカリフォルニア大学デービス校が提携し、ZEV法をベースとしたNEV法を研究したのだ。つまり、NEV法はZEV法のパクリではなく、ZEV法の正式な応用編なのだ。
このNEV法が2019年から施行され、EVクレジットという単位で計算して、中国新車販売の10%を電動化することが決まった。2020年にはさらに引き上げて12%になる。
こうした、国が主導するEV施策については、インド、フランス、イギリスなどが2030年を目途とした方針を示すに止まっており、早期に実施するのは中国のみ。その中国は言わずと知れた世界最大の自動車製造・販売国である。2017年実績では2900万台で、第2位アメリカ(1700万台)を大きく引き離している。
結局、最近の世界EVシフトの根源は中国にあり、当面の間は中国政府関係者の発言に世界の自動車メーカーが一喜一憂する状況が続きそうだ。