守りに入らず攻め抜いて世界観を追求! 新型トヨタアルファード/ヴェルファイアのデザインを解説 (2/2ページ)

内外装に加えボディカラーでもキャラクターの世界観を追求

 2015年に3代目アルファードが登場した際には、ボディサイドの豊かな抑揚に大きな注目が集まった。今回のビッグマイナーチェンジで生まれ変わったフロントマスクは、その特徴的な抑揚に対してさらに一体感を感じさせる、流れるような自然な融合を果たしたデザインと言えるだろう。

「ヴェルファイアについては、そもそもアルファードに寄ってしまったように見える原因がなんなのかを考えるところからスタートしました。真ん中に大きなグリルがあってランプがあるという、ある意味でクルマの王道的なデザインに近づいたことが原因なのではと分析し、それをもとにアイディアを展開しました。なかでも大切にしたのは、クールでハイテク感のある印象と、高級感との印象のバランスです。クールテックは行き過ぎると高級感と相反した印象を与えてしまうんです」

「最良のバランスを模索するために、一度はグリルがほとんどないというアイディアまで試しました。いくつものアイディアはデザイン過程が進むなかでふたつに絞られました。一般的なデザイン開発では、さらにそれをひとつに絞って立体モデルを作り、ブラッシュアップを図っていきますが、今回はふたつの案の両方を立体化して検討しました。1台の車体の右と左でデザインが違うというモデルを作ったんです。異例なことではありますが、クールテック感と高級感のさじ加減は本当に微妙で、スケッチだけでは判断できなかったんです。片側をよくしたらもう片側もよくしていくという煮詰め方を行なって、最終案に向けて完成度を高めていきました」(小島さん)

 大胆に生まれ変わったエクステリアは、空力性能にも徹底的に配慮。従来を超えることを目標に最後の最後まで風洞実験を繰り返し、0.1mm単位での修正を繰り返して完成させている。

「ランプの光らせ方にもこだわりました。フロントもリヤも2段になっていることをしっかりと見せるデザインです。従来型のヴェルファイアのフロントは、下側がターンランプだけなので、昼間はしっかり2段に見えますが、夜は上だけが光って見えていたんです。今回のデザインではフロント、リヤともに、夜間でもしっかり2段に見えるデザインになっています」(小島さん)

 攻めるデザインという意志は、外形カラーにも貫かれている。エアロボディ専用の新色として追加されたダークレッドマイカメタリックは、トヨタのLサイズ高級ミニバンとしては初の試みとなるものだ。

「ダイナミックアグレッシブなエクステリアをさらに際立てる新色です。数百メートル離れていても、新しいクルマが近づいてくることがわかるイメージで作り上げたカラーです。エスティマでも赤は設定されていますが、こちらは質量感を持たせたインパクトのあるダークなレッドです」

「また、定番のシルバー系カラーについても、今回は豪華勇壮、エレガントなど、上品さをより感じていただけるスティールブロンドメタリックを新設定(標準ボディのみ)しました。赤味を少し足したエレガントな印象で、とくにアルファードのふくよかなドア断面の陰影が美しく見えます。また、法人需要が伸びていることから、フォーマルなシーンにもふさわしいグラファイトメタリックも設定、こちらもこだわりを持って作り上げたカラーです」(山川さん)

 エクステリア同様、インテリアについても、いくつもの進化点を見つけることができる。なかでも注目したいのは、エアロボディにも追加された最上級グレード「エグゼクティブラウンジ」の内装だ。

「ここ数年の社会の変化も見すえて、ヤングエグゼクティブや若いユーザー層をターゲットに、大胆不敵さを色でも表現することを狙いました。大きな特徴はホワイトの内装と、シルバーの木目調加飾です。この加飾にはインナー3Dプリントという手法を採用しており、光の当たり具合で凹凸がよりしっかり見えます。じつは標準ボディの加飾と同じ工法・木目なんですが、シルバーにすることで陰影がより深く出るんです」

「また、メーターについてもエグゼクティブラウンジ専用デザインを用意しました。ライトゴールドのメッキリングを施し、よりラグジュアリーな印象です。一方ほかのグレードでも、それぞれのイメージに合った加飾を施しています。ハイブリッドでは先進イメージを、標準ではより上品さが感じられる方向性に振ってあります」(山川さん)

 こうして作り上げられたアルファード/ヴェルファイアの新デザイン。その進化は、内装・外装ともにマイナーチェンジの枠では収まり切らないほど大胆なもの。攻めに攻めたデザイナーの熱い想いは、クルマの随所から感じ取ることができるだろう。


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