守りに入らず攻め抜いて世界観を追求! 新型トヨタアルファード/ヴェルファイアのデザインを解説 (1/2ページ)

両者の距離感をしっかり取って各キャラクターをより明確に

 フルモデルチェンジとマイナーチェンジ。デザインを作り上げるうえでは、どちらにも違った苦労がある。フルモデルチェンジの場合は、当然ながらイチからすべてを作り上げていく苦労。そしてマイナーチェンジの場合には、限られた範囲の変更でどれだけ魅力を高めていくかという苦労だ。

 とりわけアルファード/ヴェルファイアのように、デザインが市場から高く支持されているモデルの場合、そもそものデザイン完成度が高いだけにその魅力をさらに高めることは至難の技。ゆえに、従来の魅力を損なわないことを最大の狙いとして、「守りに入ったデザイン」にするという選択肢が取られたとしても不思議ではない。だが、今回のマイナーチェンジでデザインチームが選んだのは、「攻めに攻め抜く」という選択肢だった。

「ご指摘の通り、守りに入るという選択肢もあるだろうとお考えになる方は大勢いらっしゃると思います。とくに高級車の場合は当然かもしれません。ですが我々は、高級車だからこそ攻めるべきだと考えたんです。市場から高いご支持をいただけたとしても、決して保守的になるのではなく、つねに新しい魅力をお客様に提供していきたいという想い。それは開発チームだけでなく、アルファード/ヴェルファイアに対する全社をあげての想いでもあるんです」(今飯田さん)

 高い完成度のデザインをさらに高めていくということ。その高いハードルに挑むためデザインチームが最初に行なったのは、徹底的にアルファード/ヴェルファイアのオーナーの声に耳を傾けるということだった。

「まずはわれわれデザイナー自身が各地のディーラーに赴いて、販売の最前線に立つ営業の方を通して、お客さまが感じている好評点と不評点を徹底的に認識するということから始めました」(濱野さん)

「お客さまの声は好評点がほとんどだったのですが、ヴェルファイアに関してはもっと攻めてほしいという意見がありました。一方で、初代のようなクールなイメージも欲しいという、方向性がまったく違う声もありました」(今飯田さん)

 デザインチームのリサーチ作業はさらに続く。初代・先代のユーザーごとに、「パワフル」や「スマート」、「クール/斬新/ハイセンス」などといった、アルファード/ヴェルファイアを語る数多くのキーワードを使って好評点・不評点を徹底的に分析し、アルファードらしさ、ヴェルファイアらしさをイチから見つめ直す作業を実施した。

「アルファードでは、従来型でも十分に表現できていた“アルファードネス”をさらに上方向に伸ばすこと。ヴェルファイアについては、少し豪華さが見え過ぎていて、アルファードの立ち位置に寄り過ぎていたのではないかと考え、もっとお客さまが望むクールでハイセンスな方向にしっかり舵を切っていこうと。さらに、標準ボディはクールテックな方向に、エアロボディはよりダイナミック・アグレッシブな方向で、両者の距離をしっかりととって、ヴェルファイアらしい姿をしっかり表現する。こうした考えのもと、実際のデザイン開発を進めました」(今飯田さん)

 アルファードとヴェルファイアの魅力をそれぞれでさらに際立たせ、さらには標準ボディとエアロボディの差別化をより明確にする。デザインチームが採った手法は、いわば、4つの車形をデザインするというものだ。先述の相反するふたつのユーザーの要望にも、しっかり応えられる方向性と言える。

「アルファードはフォーマルな場面で使われるお客さまも多く、たとえば政治家の方にもふさわしい立派さや高級感が必要です。そのための表現として重要な鍵を握るのはフロントのグリルですが、その変更についてはグリルの限られた枠のなかで色々な試みを行うだけでなく、もっとフロントを大きく変えてチャレンジするとか端正な方向に振るなど、色々な幅の方向性を模索しました」

「その結果から見えてきたのは、グリルの先端のアルファードマークからすべてが始まり、立体がリヤに向かって流れていくというデザインコンセプトです。加えて、グリルやヘッドランプ、メッキ加飾やバンパーなどをシームレスに融合させたデザイン。これらの方向性は、候補として描かれた3つのデザイン案のすべてにも貫かれていて、最終段階まで揺るぎない価値としてデザインに盛り込まれることとなりました」(北角さん)


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