恐るべき中国の電気自動車普及率! 虎視眈々と日本を狙うEV路線バスの脅威

中国の北京市では2017年中に4500台のEVバスを導入

 今回の北京モーターショー会場で、海外のオートショー会場でよく会う日本人ジャーナリスト氏に出会ったときに、市内にEVの路線バスが多数走っていると聞いた(ショー取材期間中は地下鉄で移動していたこともあり気がつかなかった)。街歩きのために帰国日をずらしていたので、さっそくホテルの前の大通りでEV路線バスがくるのを待っていた。

 報道によると、北京市は2017年10月に2017年中に4500台のEV路線バスの導入を発表した。さらに報道によるとこのバスは急速充電が可能でその充電時間はわずか15分で完了するとのことである。

 朝の通勤ラッシュからは少しずれた9時30分ごろから待機していると、結構な頻度でEV路線バスがやってきた。さらには2階建てのダブルデッカー仕様の路線バスまでやってきたから驚きいてしまった。北京市内ではEVではない2階建て路線バスも走っている。東京あたりで2階建てバスとくれば観光客向けのものばかりだが、朝夕の通勤時間帯には超満員になる路線も少なくない北京市内では輸送力増強のためのあくまで実用的な理由で導入されているようだ。

 当然の話だが、EVバスが通過するときにはわずかにモーターの音が聞こえるのみで、日本でのバスが通り過ぎる時のディーゼルサウンドがないのは、路線バス好きの筆者としては少々物足りないところではある。

 撮影をしているうちに、その場所にくる2階建てEVバスがいつも“がら空き”なのに気が付いた。そこで我慢しきれずに、どこへ向かうのかもわからず思わず乗り込んでしまった。ちなみに北京市の路線バスは地下鉄にも乗れるスイカのような公共交通カードで乗車が可能。現金でも乗車できるが、そのときは車内の中ほどにいる料金徴収係の女性(たいていはオバちゃんだった)に払うことになる。

 乗車して真っ先に2階席へ向かった。運よくすぐに最前列席が空いたのですかさずゲット。席にはシートベルトが装備してあった。車内にはモーター音もほとんど入らず静かそのもの。EVなので出足の良さはバッチリで、運転士のアグレッシブなドライビングもありシグナルレースは“ぶっちぎり状態”であった。日本でのバスの出足はのったりした印象が強いが、EVバスは音もたてずにスムースに加速していく。

 狭い通りをいくつも抜けながら、とある大通りを走ると道路のセンター部分を連節タイプのEVバスが走っていた。そこで最寄りのバス停で降り(北京のバスは降車ボタンがなくすべての停留所に停まる)、連節バス乗り場へ向かった。そこはプラットフォームのようになっていたので、“もしや”と思っていると、それはBRTシステム(日本語では都市大量旅客高速輸送などというらしい)であるのが確認できた。

 EVバスの中でパンタグラフを持つ車両も発見。そこで、中国の大都市ではトロリーバスが走っているのを思い出した。筆者が訪れる上海や広州ではいまも市街地中心部ではトロリーバス(車両は今風のもの)が現役で運行されている。北京市でもトロリーバス網は中心市街地をメインに構築されており、そこを通る車両にはパンタグラフが装着されているらしい(特定の停留所でパンタグラフを格納していた)。

 世界でもっともといっていいほどEVの普及に積極的で、事実としてEVの普及台数も多いのが中国。政府の大号令で一気にEVのようなものが広がりを見せるのが、中国のような政治体制の国家ともいえる。

 しかし中国ではトロリーバスや電気原付自転車など、電気モーター駆動となる自動車に触れる機会が昔から多く、それゆえなんの抵抗もなくEVも受け入れられていることも普及の加速を早めているのかもしれない。何せホームセンターには、電線から直接“盗電”して、電気モーター式原付自転車に充電可能とされる、金属のフックのついたケーブルが売られているなどという都市伝説もまことしやかにささやかれるほど、一般人民もある意味は電動自動車には馴染み深いともいえるのだ。

 中国から帰国し、さっそく日本の街に繰りだすと路線バスがいつものディーゼル音を奏でながらやってきた。北京市でもまだまだエンジン搭載の路線バスが多数を占めるが、EVバスの導入スピードの速さはさすが中国と舌を巻いてしまう。

 すでに日本のバス事業者の多くはEVバスに熱い視線を送っている。ただ日系バスメーカーがEVバスをいますぐラインアップする気配はないし、そのようなものに対応する柔軟性というものも乏しいとの話も聞く。中国系EVバスメーカーはそこを見越して日本に熱い視線を送っている。「でも中国製でしょ」というなかれ。中国のEV路線バスは北京のみならず深センなど、中国各地での営業運行実績がすでにあるのだ。

 中国メーカーもいきなり乗用車で日本市場をねらうのは厳しいと考えていることだろう。ただバスやタクシーなどのフリート販売では、日本メーカーのEVへの取り組みは中国主要メーカーの足もとにも及ばないので、市販実績豊富な部分ではバスやタクシーでは十分参入機会があると考えているようである。何せ日本の最新のエコタクシーと言われるトヨタのJPNタクシーですら、LPガスハイブリッドなのだから。

 ここまで見てくると、少なくとも“エコ先進国”という看板は自動車に限って言えばそろそろ日本はおろさなければならないかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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