中国事情を無視してクルマの開発をすることはもはや考えられない
今回の北京モーターショー会場には日本人のモータージャーナリストも多く取材に訪れていた。その中には「日本でもっとも影響力のあるモータージャーナリスト」として知られる国沢光宏氏も。そこで国沢氏と今回の北京モーターショーについて総括してみた。
ひと言でいうと「EVとSUV」だらけのモーターショーということで意見は一致。どのメーカーブースもEV に対する取り組みを大々的にアピールしているし、展示してあるモデルのほとんどがSUV。だがSUVのデザイン性は進化著しく、見た目もカッコいいモデルが増えていることにも驚いていた様子。とくに「LINK&CO」という新興ブランドのSUVが気になったという。このモデルはボルボを傘下に収めた吉利(ジーリー)が開発・製造し、ボルボXC40とシャシーを共用。高い完成度と斬新な販売方式で、新時代を切り開く勢いを感じさせる。
一方2人が不思議に思ったのは、多くのメーカーで広州汽車のEVモデルを自社ブースに展示していたことだ。三菱自動車はエクリプス・クロスを中国デビューさせてステージ中央に飾っていたが、ブースの端に広州汽車の小型SUV型EVが展示されていた。三菱自動車の日本人解説員は、何故そこに展示されているのか自分でもわからないという。確かに広州汽車は三菱自動車の現地生産を手がける提携企業だが、そのブランドネームのまま展示されることは通常考えられない。これはどうやら例のNEV法施行を見据えてEVを現地開発・生産するより既存現地メーカーから、EVモデルのOEM供給を受け規制遵守とクレジット回避を狙っているのではないだろうか。
確かにあと1年で施行される規制に自社開発で対応するには、時間もコストも掛かりすぎリスクが大きい。それに中国の方針変化を見極めてからでなければ、じっくり腰を据えた開発も難しいだろう。現地メーカーの現行モデルで急場を凌ぐ決断を、多くの外国メーカーがしていると予測できる。いずれにしても昨年実績で2300万台以上が販売された巨大中国マーケット。今後のその台数は増え続けると予測され、各国自動車メーカーも中国事情を無視してクルマの開発をすることはもはや考えられない状況なのだ。