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V6エンジンはもはや新規開発! 新型トヨタアルファード/ヴェルファイアのメカニズムを解説 (1/3ページ)

V6エンジンはもはや新規開発! 新型トヨタアルファード/ヴェルファイアのメカニズムを解説

国内最高峰のミニバンがファーストクラスを目指して正常進化

 ミニバンと言えばファミリーカー、そうした発想は時代遅れとなった。少なくともアルファード/ヴェルファイアに関しては、カンパニーカーとしてのニーズが高くなっているという。

 今回のビッグマイナーチェンジでは、そうした部分でのニーズに応えることが大いに意識された感がある。ショーファードリブンとしてのニーズについて、トヨタは歴代クラウンやレクサスLSといったサルーンを開発する過程で培ったさまざまな知見を持っているが、それだけでは足りないとばかりに開発陣はユニークなアプローチをしてきたという。そのひとつが、ダイムラーの最高級ブランド「メルセデス・マイバッハ」に多くのエンジニアが試乗するといった試みが挙げられる。世界最高峰の高級車たる所以を肌で感じることで、ハイエンドに求められる世界観を共有したのだという。

 また、今回のマイナーチェンジにおける目玉として、予防安全パッケージを第2世代の「トヨタセーフティセンス」へと進化させた。そうした制御面での開発を配慮して、パワートレインやシャーシなどハード面の開発を早めにフィックスさせ、制御の熟成に時間を取ったという。高級車としての完成度を考慮したスケジュールで開発しきたのが、新しいアルファード/ヴェルファイアなのだ。

高級ミニバンに求められる威風堂々とした走りにさらなる磨きをかけた

 トヨタの公式発表におけるパワートレインの変更点としては『よりダイレクトな走りの実現と高い燃費性能を確保した3.5リッターV6エンジン(2GR-FKS)&Direct Shift-8ATを採用しました』という一文でしか触れていない。

 たしかに、2.5リッター直列4気筒エンジンやハイブリッドについては大きな変更点はないが、新たに搭載されたV6パワートレインのプロフィールを見れば、短いセンテンスで表現するのがもったいないほど濃い内容が見て取れる。

 D-4S(筒内噴射&ポート噴射を併用)の燃料噴射系を採用し、その最高出力は301馬力(221kW)、最大トルクは36.8kg-m(361N・m)を実現。高級モデルとはいえ、ミニバンにこうしたハイパフォーマンスエンジンを載せた狙いはどのようなものなのだろう。担当エンジニアに聞いた。

「まずアルファード/ヴェルファイアの車格から考えて、われわれが持っている最高のエンジンを与える必要があると考えました。また、開発責任者の吉岡からパワートレイン開発チームに与えられたミッションは『300馬力以上』かつ『従来よりも省燃費』という相反するものでした。そのためにはD-4Sとすることは必要だと考えたのです。さらに省燃費を考慮してアトキンソンサイクルも採用しています。これは吸気側カムの可変バルブタイミング機構領域をワイドにすることで実現しました。また燃費を考慮して燃料ポンプを可変タイプとして必要以上に燃圧を高めずに済むようにしています」

 アトキンソンサイクル(高膨張比サイクル)が熱効率に優れるというのは、プリウスなどにも採用されているので広く知られている。そして、この新しいV6エンジンのアトキンソンサイクル領域はごく一部ではなく、日常走行レベルで広範囲をカバーしているという。カタログ値(JC08モード)にとどまらず、実用燃費においても貢献するテクノロジーだ。

 燃費と動力性能の両立では、トランスミッションの進化も重要だ。そのために採用されたのが、8.2という変速比幅を誇る「Direct Shift-8AT」である。

「この8速ATはTNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)の考え方に基づいて生まれたもので、ユニット自体は北米向けのモデルで使われていますが、国内では初採用となります。ポイントは、ロックアップクラッチを多板として、ロックアップ領域を広げています。それにより、ダイレクト感を増すと同時に伝達効率をMT並みとしています」

 運転席に座り、新意匠になったメーターを眺めると、タコメーターのレッドゾーンが6800rpmから刻まれているのに驚かされる。こうしたハイレビングユニットと仕上げるために、どのように進化を果たしてしているのだろうか。

「クランクシャフトやコンロッド、ピストンといったムービングパーツを軽量化することでエンジンの負荷を軽くしています。こうした軽量化は気持ちよく回るといったエンジンの官能面でも貢献していると思います。加えて、アクセル操作に応じてトルクコンバーターをリニアに制御することで、燃費と鋭い加速感を両立させています」

 型式こそマイナーチェンジ前と同じ2GR型だが、ブロックからして別物になっているという新V6エンジン。パワーユニットの進化にはフラッグシップとしての自負が感じさせてくれる。

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