Fスポーツはチーフエンジニアも徹底的に走り込んで開発した
秋に日本デビューするレクサスESの発表会壇上で初の開発責任者インタビュー。LSに近い仕上がりというからすごい!
新型のレクサスESが世界で初めて北京で公開された。プレミアム・セダン好きの中国市場では大きな注目を集める。この秋、初めて日本での発売が決定しているモデルだけに、いち早く詳細が知りたいということで、現地で榊原康裕チーフエンジニを直撃した。これが、その日本初のインタビュー動画である。
榊原さんは「ESは原点回帰して静粛性と乗り心地、広い室内を追求した」というものの「LCから始まったすっきりとした奥深い味わいを達成しようとした。ある意味ではLSに近いと実感できるレベル」というから面白い。「荒れた道でも破綻しない。ステアリングはクイックで反応に遅れがない。とくにFスポーツは、走りのチューンニングが施されたスポーティ・バージョン。自分でも走りこみましたから」と自信たっぷりだ。
壇上の新型ESは、堂々としたプレミアム・セダンだ。昨年発表されたLSに近い豪華なイメージがある。全長4975mm、全幅1865mmで現行GSより少し大きなサイズになっている。車重は1690kgとサイズの割には軽量だ。GSがFR(フロントエンジン・後輪駆動)のクラウンなどと共通のプラットフォームになっているが、このESは、FF(フロントエンジン・前輪駆動)の新型カムリと同じプラットフォームを使っている。トヨタブランドが新しいTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)と言っている、新世代のプラットフォームのレクサス版GA-Kプラットフォームを採用。重心が低く、ワイド&ローの安定したプロポーションを完成させている。
ESはレクサスブランドが立ち上がった1989年に発売され、旗艦モデルのLSとともに長い歴史を持つ。日本では発売されていないが、数多くの国で売られてきた。現在上級セダンとしてそのパフォーマンス評価の高いトヨタ・カムリのレクサス版として、さらに進化を遂げて発売されるから楽しみだ。なかでも走りの性能を上げたFスポーツがラインナップに加わるから、クルマ好きにも気になる存在となるだろう。エンジンは3.5リッターもラインアップされているが、日本での発売は、2.5リッターの新世代ハイブリッドのパワーユ
ニットを採用する。
Fスポーツの外観は極めて特徴的で挑戦的な顔つきをしている。グリルはブランド統一のFメッシュパターンを採用し、19インチアルミホイールや新設計のメーターなどがスポーティさを増している。日本刀の仕上げ工程「刃取り」から着想した専用アルミオーナメントパネルも新鮮だ。匠の研磨技術を惜しげもなく投入している。
今回の新型ESは、FFベースながら走りを意識したチューニングになっているのが特徴。FFの良さ、室内空間を思い切り広く設計している。上質な乗り心地と優れた操縦安定性で、運転する気持ち良さを追求してきた。「二律双生」だと榊原チーフエンジニアが胸を張るだけに試乗が楽しみだ。もちろん最新の安全技術を満載、駐車場でのアクセルペダルの踏み違い、接近する後方の車両との接触事故などの被害を軽減できるサポートシステムも採用している。
さてレクサスのラインアップは現在、新世代に向けて整理が進み始めている。人気のSUVではRX、NXに続いて秋には最も人気の高いコンパクトSUVのUXが登場する。トヨタC-HR、ホンダ ヴェゼル、マツダCX-3などと競合するが、レクサスとしては発売されたばかりのボルボXC40、BMW X2あたりが最大のライバルとなるか? LSやESなどのプレミアム・セダン群には欧州のメルセデス・ベンツ、BMW、アウディなどライバルがひしめく。同クラスのGSのフルモデルチェンジも気になる時期だが、しばらくは新型ESと併売され、2年以内に役目を終えるはず。FR好きなら今のうちにGSという選択肢もあるが、どうだろう。いずれにしてもこの秋、プレミアム・セダン対決が楽しみになってきた。