新型カムリをヒット車に押し上げた「乗り替え難民」の存在

爆発的に売れた先代プリウスオーナーが4代目でなくカムリを選択

 現行カムリは2017年7月10日にデビュー。先代モデル同様にハイブリッド仕様のみが日本国内でラインアップされ、先代モデルでも大きめであったボディサイズはさらにサイズアップされた。

 同年8月10日にトヨタが発表した、正式デビューから1カ月経過した時点での受注台数は1万1500台となっており、月販目標台数2400台を大幅に上まわった。もちろんこれが1カ月での受注台数を現わしているものではなく、それ以前からの予約受注台数も含まれていることになる。

 自販連(日本自動車販売協会連合会)が2018年3月に発表した、2017事業年度(2017年4月〜2018年3月)のカムリの販売台数は2万6127台となり、登録車販売ランキングでは31位、前年同期比で657.4%となった。

 月平均販売台数は約2177台。2017年4月から6月まではまだ先代モデルで、しかも末期モデルのため販売台数が落ち込み時期でもあったので、現行カムリは十分ヒット車(いまどきの日本市場では月販2000台あたりを超えると立派なヒット車)といえる販売実績を残したこととなる。

 ただ先代モデルまではカローラ店の専売モデルであったのが、現行モデルではトヨペットとネッツ店が新たに取り扱い店に加わっている。別な見方をすれば、取り扱いディーラーが増えたのだから、販売台数も自ずと増えるのは当たり前ともいえるのである。

 トヨタはすでに先代ではカローラ店専売だったシエンタを、フルモデルチェンジのタイミングで、トヨタ、トヨペット、カローラ、ネッツ店という全店扱いにすることで販売台数が一気に増えて、ビッグヒットさせている。新型カムリも当然ながらシエンタようなことになるのは、ある程度予測していたことだろうが、そのモデルにも魅力がなければ、単純に取り扱い店を増やしただけでカムリはヒット車にはならなかっただろう。

 発売間近のディーラーで話を聞いたときには、「日本で売るのならボディサイズの拡大はここまでにして欲しいですね」などとボディサイズの大きさに不安が隠せなかった様子であったが、発売後に聞いたところ「不思議なほどボディサイズを気にしないお客様が多い」とのことであった。

 日本市場ではセダンの人気がいまひとつともされているが、それは国内市場でセダンの選択肢が少なすぎるということも影響している。つまりたとえセダン愛好家であったとしても、乗りたいモデルがなくやむを得ずほかのボディタイプのモデルへ代替えするといったケースも目立つのである。先代プリウスが爆発的にヒットしたのも、行き場(代替え)を失ったセダンユーザーのかなりの数が、ハッチバックスタイルだがプリウスへ流れたとの話も聞いている。

 そして莫大な数にのぼる先代プリウスのユーザーが代替え期を迎えたタイミングで新型カムリが投入されたのも販売台数に良い影響を与えているようだ。

 また新しくカムリの扱い店となったトヨペット店では、マークXユーザーの代替え候補車がなかったのが頭痛の種になっていたとも聞いている。クラウンと異なり、ハイブリッドの設定もない現状ではマークXからマークXへの代替えはなかなか勧めにくい。そうこうしているうちにクリーンディーゼル車をラインアップする輸入車も含む他ブランド車へ代替えされてしまうことも目立ったようだ。

 その点カムリならば排気量も2500㏄で、しかもハイブリッドとなるので、セールスマンとしても代替え促進活動が行いやすいというもの。ネッツ店にしても過去にはクレスタなどのセダンを扱っていたこともあり、数はかなり少ないとはいえ現有ユーザーも少なくなく、代替え機会を失っていたユーザーなどへの代替え促進に効果を発揮しているようだ。

 日本では排気量やボディサイズの大きいセダンはたいがいクラウンのような、ラグジュアリー志向の強いものとなってしまうが、実用セダンのニーズもある。そのようなひとたちに「クラウンがあるでしょ」というロジックは結構乱暴なものともいえるのだ。

 単純に販売統計をみると、「新型カムリがよく売れているよね」で終わってしまうが、そこにはあえて狙ったかどうかは別として、さまざまな“よく売れるはず”というようなトピック(必然性?)があったのだ。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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