プラットフォームの共通化など効率のよい生産で走もよくなる
車体剛性に関しても同様で、日本車はモデルチェンジのたびに「ボディ剛性●●%アップ」、「ねじり剛性はドイツ車よりも上」などとアピールするが、そもそもドイツ車は剛性がシッカリしている上に、剛性が必要な部分とそうでない部分があることと、その先の剛性バランスにまで注力している。剛性を上げながら軽量化も両立できるのはそれが理由だ。
あるエンジニアによると、BMWは溶接した際の残留応力まで気にして、車体を寝かせることも。さらにスペアタイヤの収納スペースの形状も車体剛性に大きく影響するそうだ。
サスペンションは一般的に「日本車は足の動きが渋い」と言われることが多いが、それは本当に必要な部分の剛性が足りておらず、サスペンションに本来入るはずのない余計な力が入ってしまう。結果的に動きを規制してしまったり、耐久性/信頼性にこだわりすぎてダンパー/ブッシュなどは本来よりも硬めの設定になっていることもあるそうだ。そのため、ワークス系のチューニングアイテムを装着する(ノーマルよりも耐久要件が緩い)と、逆に乗り心地がよくなってしまう逆転現象が起きてしまうのである。
恐らく、日本のメーカーもこれらのことにすでに気が付いていると思うが、それがなかなか実現できないのは“生産”の部分の問題もあるからだ。日本のメーカーの生産ラインは「速く」、「効率的に」、「ミスなく」作る工夫が随所に行われているが、逆にそれが足枷になってしまうこともあるそうだ。そのためには根本的に生産システムを刷新させる必要があるので、そう簡単に実現できることではない。
しかし、日本のメーカーも「仕方ない」と諦めているわけではなく、既存の生産方法のままで、同じような性能を出せるような工夫/改善を行っている最中である。トヨタの「TNGA」やスバルの「SGP」、マツダの「スカイアクティブ」などがその一例だ。
1990年代に「日本車はドイツ車を追い越すかも」と言われる時代があったが、バブル崩壊やリーマンショックで引き離されてしまったのも事実だ。しかし、現在はその差は少しずつだが縮まり始めているし、電動化技術に関してはむしろドイツ勢を上まわっている部分も多い。
100年に1度の自動車転換期、自動車はどのように変わっていくのか? クルマ好きのなかには「最近のクルマはつまらない」と言う人もいるが、個人的にはより面白い時代になってきていると思っている。