ルノー製ディーゼル「M9R」エンジンは欧州ではいまだ現役
現在、日本でも数多くのクリーンディーゼルが選べるようになっているが、その先鞭をつけたのは2008年に追加設定された、先代の日産エクストレイルだったことを覚えているだろうか。
主にルノーが開発した「M9R」型の2リッターディーゼルエンジンを搭載したエクストレイルは、当時の「ポスト新長期規制」をクリアした初めてのディーゼル乗用車だった。
しかし、3代目となったエクストレイルにはディーゼルユニットは積まれていない。ワンモーター・ツインクラッチのハイブリッド仕様によって環境性能をアピールしている。はたして日産はディーゼルエンジンを見捨ててしまったのだろうか。
否、ディーゼル仕様のエクストレイルが存在していないわけではない。現行ラインアップを見ても、海外向けには2リッターディーゼルエンジンを積んだグレードが設定されている。その最高出力は177馬力(欧州仕様)、日本仕様にエクストレイルに搭載されていたのと基本的同じエンジンだが、環境性能を高めつつ、パフォーマンスもアップしている。組み合わせられるトランスミッションは6速MTとCVTというのも、日本仕様に設定されていないのが不思議に思えるほどだ。
つまり、ニーズのある地域に向けてはディーゼルを見捨てていないどころか、着実に進化させているのだ。
結局のところ、日本仕様に未設定なだけで、現行エクストレイルにもディーゼル仕様は存在する。ディーゼルを考慮した車体設計であり、駆動系を準備しているといえる。ディーゼルが作れないわけではない。
では、なぜゆえに日本向けにはディーゼルを用意しないのか。その点については、投入コストに見合うだけのセールスが見込めない、と商品企画の段階で判断したとしか言いようがない。海外仕様にディーゼルを設定しているからといって、それを日本仕様にするためには開発費も必要となるし、型式を申請するにもコストはかかる。
ガソリン、ガソリンハイブリッド、クリーンディーゼルと3種類(それぞれにFFと4WDを用意するならなおさら)を設定するのはメリットがないと判断したのであろう。もちろん、そこには2代目エクストレイルでの販売データも裏付けとなっていたはずだ。
そもそも日本で多く見られる短距離ユースではディーゼルはメリットが出ないどころか、デメリットが目立つ。その最たるものがDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)の再生だろう。ススをキャッチするフィルターが目詰まりするのを防ぐために燃料を噴射してススを焼く必要がある。その際に黒煙が出ることがあるのもクリーンではないし、またDPF再生時にはエンジンオイルに燃料が混ざってしまうので、オイルの希釈が進み、交換サイクルが短くなる傾向がある。
また、他社(マツダ)のクリーンディーゼルではエンジン内にススが付着することが問題となり、複数回のリコールが発生している。
そうしたネガを考えると、日本仕様はガソリン直噴エンジンとハイブリッドに絞ったほうが適切と判断したというのは、理解できる。クリーンディーゼルのトップランナーだった日産の判断としては残念に思うが、日本市場のトレンドを考えるとディーゼルというのは、まだまだニッチな存在なのかもしれない。