東京のタクシーが儲かるエリアに集中! 過疎地域を救う方法はNYにあり

NYではタクシー過疎エリアのためにグリーンタクシーを導入

 ニューヨークのタクシーといえば、“イエローキャブ”と呼ばれているように車体色は黄色で統一されている。しかし、緑の車体色のタクシーが走っているのを、観光や出張などでニューヨークを訪れたときに見かけたひとも多いに違いない。

 このタクシーは“アウターボロータクシー(以下グリーンタクシー)”というもの。ニューヨーク市といっても、観光などで訪れるのはおもにマンハッタン地区となるが、ニューヨーク市はそのほかにブロンクス、ブルックリン、クイーンズ、スタテンアイランドという行政区から構成されている。

タクシー

 しかしイエローキャブのじつに95%以上がマンハッタン地区、及びJFKやラガーディアといった空港で集中して営業運行を行っているとされ、マンハッタン地区以外では、タクシーをなかなか利用することができなかったのが現状であった。そのためマンハッタン地区以外でのタクシーの利便性向上のために導入されたのがこのグリーンタクシーである。

 グリーンタクシーは空港以外のマンハッタン東96丁目と西110丁目以北と、ブルックリン、ブロンクス、クイーンズそしてスタテンアイランドでお客を乗せることができる。そしてたとえば、ブルックリンからマンハッタンの42丁目までの乗車希望があった場合は、営業区域外でも乗客を降ろすことは可能となっている。

 それではニューヨークと並ぶ大都市東京はというと、東京も特別区と武三(武蔵野・三鷹市)と北多摩、南多摩、西多摩、島地区という区域分けがされており、東京でも区域外営業は禁止されている。

 ただし、区域外営業というのは乗車地も降車地も区域外というのがダメということであり、降車地が仮に隣接県であっても乗車地が営業区域内なら問題なく、さらに営業区域に戻るときにも降車地が営業区域内ならば、たとえば特別区と武三地区のタクシーが埼玉までお客を運んだ先で、行き先が東京23区内までというお客を乗せることは可能となっている。

 話を特別区と武三地区に絞ってみると、ニューヨークほど極端ではないが、やはり一定地域内においてタクシーが集中して営業運行している傾向はあるようだ。新人乗務員の研修時には、「日中の営業としては、千代田、中央、港区をメインに流しなさい」と教えてもらうと聞いたことがある。これらの地域は得意先への移動などでタクシーを利用するサラリーマンや買い物帰りなど多くのひとの利用が望め、港区は言わずと知れた高級住宅地の広がるエリアで、日常生活からしてタクシーが移動手段のメインというひとも少なくない。

 少し昔の話になるが、“アベノミクス”という言葉が話題になり始め景気が上向き始めたころ、さっそく証券市場があり、証券会社が多く建ち並ぶ中央区兜町で、取引先への移動などでタクシーのニーズが目に見えて増えてきたということを乗務員から聞いたことがある。

 ただし土曜・日曜になると話が変わってくる。土・日に限らずにやはり営業運行するのに“おいしいエリア”としては世田谷区もある。「世田谷を制するものはタクシーを制す」なんてことも言われているぐらい稼ぎの良い乗務員のなかには、世田谷の土地勘や道路事情に明るいひとも多い。世田谷地区も東京のなかでは“山の手”などとも呼ばれるリッチ層が多く住む地域。ニーズが多いだけでなく、その使い方はやはり羽振りがいいのである。

「用賀あたりからでも渋谷駅までの利用は当たり前です。成城学園から羽田空港などというのもあったりしますし、とにかく乗り慣れているのは確かですね」とは業界事情通。

 そのようなおいしいエリアなのだが、難題も多い。まずは道路が複雑に入り組んでいること。さらに街の風景が比較的同じような雰囲気になっているので、土地勘がなかなかつかめないことがある。「銀座から深夜に乗られるお客様と同じで、普段乗り慣れているので、目的地までの裏道にもお客は精通しています。下手すれば即苦情にもなりかねません」とはタクシー乗務員経験のあるA氏。かなり上級レベルの営業地域であることは間違いないようだ。

 “下町”と呼ばれる地域もニーズがないわけではないが、利用距離が山の手地区に比べると短いのも現実のようである。ただその下町をメインに営業活動して、コツコツと稼ぎを積み上げていくタイプの乗務員がいるのも確かだが、やはり都心に比べれば走っているタクシーの絶対数は少ないといえるだろう。

 ただし、江東区などの湾岸エリアで“タワマン”などと呼ばれる高層マンションが林立する地域では、公共交通手段が路線バスのみという場所も多く、それらの地域の一部路線は慢性的な混雑が問題化してきている。そのような地域の朝の通勤時間帯はタクシーにとってはまさに“入れ食い”状態。通勤を急ぐサラリーマンなどが続々とタクシーを拾うシーンはこれらの地域の風景のひとつになろうとしている。当然それを当て込んで流すタクシーも多い。

 さて、訪日外国人の数は増える一方で、リピートする訪日外国人も多く、見てまわる地域も拡大しディープな場所が目立ってきているのも確か。NYのグリーンタクシーは少々レギュレーションが厳しいので、日中だけでもグリーンタクシーのようなものを作ってコントロールしてみるのも一考かもしれない(夜間はやはり圧倒的に都心部のほうが稼ぎは良いので、夜間は都心部での営業をOKにするとか)。潜在的な新しい需要を掘り起こすことも可能かもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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