硬くなりがちな20インチタイヤでも極上の乗り味を実現
独自資本、フォード傘下を経て現在は中国の吉利(ジーリー)傘下となっているスウェーデンのボルボ。ここ数年以前から武器にしていた安全性能への注目が高まっていることが追い風になっているのに加え、クルマ自体の仕上がりの良さ、クルマのもつ華やかさと程よい個性があることなどを理由に、日本でも2013年に導入が開始された現行V40を起爆剤に人気やイメージが急速に高まっているブランドである。
今回乗ったV90クロスカントリーはラージSUVのXC90から採用が始まり、ミドルSUVのXC60にも使われている新世代の「SPA」と呼ばれるプラットホーム(メルセデス・ベンツで言えばCクラス、Eクラス級に使われるもの)で開発された、メルセデス・ベンツEクラス級のクロスオーバーSUVである。成り立ちとしては現在はそのまま当てはまらないが、スバルのレガシィツーリングワゴンに対するレガシィアウトバックのような関係と思ってほしい。
メルセデス・ベンツEクラス級のボディサイズ、車格となるボルボの90シリーズのラインアップは小山のようなSUVのXC90が先行する形で登場し、その後2017年にセダンのS90(ボルボのWebを見ると限定500台という記載がある)、ステーションワゴンのV90、そして今回試乗したクロスオーバーSUVのV90クロスカントリーが導入された。
V90クロスカントリーを中心に話を進めると、V90クロスカントリーは平均的なSUVより高い210mmという最低地上高を持ち、全グレードが4WDとなる(S90、V90にはFFも設定される)。
エンジン、トランスミッションといったパワートレインはすべて8速ATと組み合わされる2リッター直4過給エンジン(ボルボは今後2リッター直4以上のエンジンは作らないと明言)で、最高出力254馬力/最大トルク35.7kg-mを発揮するターボのT5、最高出力320馬力/最大トルク40.8kg-mをターボ+スーパーチャージャー過給で発生するT6というバリエーションを持つ。なおXC90とV90にはT6に前後モーターを加えたプラグインハイブリッドとなるT8も設定される。
XC90のグレード展開は、T5 AWD、T6 AWDそれぞれに標準のMomentumと上級のSummumとなる。
XC90に乗っていきなり驚いたのが、ハンドルを切ったあとの中心への戻り、ハンドルを切った際にハンドルに伝わってくる手応えに代表されるステアリングフィールの素晴らしさだった。
また、乗り心地もしなやかで「コトンコトン」という上品な音を伴いながら、自動車専用道路のつなぎ目を通過していくという理想的なもの。タイヤを見ると試乗したのが冬場だったため、スタッドレスタイヤを履いていたことが乗り心地にはプラスに働いていたのかもしれないが、装着サイズはなんと20インチだった。試乗車はオプションとなるリヤのエアサスが付いていた影響もあるにせよ、いずれにしても20インチタイヤを履くクルマの乗り心地としては極上と断言できる。
このあたり筆者には「V90クロスカントリーってここまでよかったかな」というイメージもあり、おそらくこの進化は導入から1年近くが経ち、発表されない各部の見直しや生産時の精度の向上などの積み重ねによるものではないかと思う。
もちろん余裕ある動力性能や、すべてを覚えきれないほど充実した安全装備、そして運転支援システムはそのままで、そこに210mmという最低地上高が加わると、V90クロスカントリーが全天候型の最強ロングツアラーの1台であるのは間違いないだろう。
さらにボルボはよく言われることだが、北欧家具をイメージさせる華やかなインテリアや、90シリーズには伸びやかなスタイルというメルセデス・ベンツやBMWにはない美点もある。それでいて価格はメルセデス・ベンツEクラスなどより安いというなかなか魅力あるクルマなのだ。
それだけにプレミアムクラスの輸入車を考える際には、ボルボも候補にだけは入れないと購入後に「しまった!」と思う可能性がある。