日本メーカーもNYショーを重要視している内容で展開
何かとイベントの多い大都市だからなのか、タクシードライバーなどに「何しにきたのか?」と聞かれて、「ニューヨークオートショーの取材にきた」と伝えても、「そんなのあったけ?」と寂しい返事が多いニューヨーク。しかしニューヨークオートショーは、その歴史は世界的にもかなり長い由緒正しいオートショーとのことである。
そのニューヨークショーだが、今年はかなり内容の充実したものであった。日本メーカーだけ見ても、トヨタが新型RAV4とカローラハッチバックのワールドプレミア、日産は北米でのボリュームゾーンでもあるミッドサイズセダンのアルティマの新型を初披露。ホンダは今年1月のデトロイトショーで初公開した、インサイトとアキュラRDXの新型市販版に加え、アキュラMDXとRDXのスポーティ仕様“Aスペック”をデビューさせた。スバルは新型フォレスターのワールドプレミアを実施し、マツダはCX-3の改良版を世界に先駆けて出展した。
日本メーカーの存在感がもともと目立つショーで、スバルなどは必ずといっていいほどワールドプレミアモデルを用意しているのだが、日本メーカーだけ見ても今年はどこもかなり気合いが入った様子が見られた。
普段はニューヨークショーに先駆けて3月上旬に開催されるジュネーヴショーの焼き直し(ジュネーヴショーで世界初披露されたモデルの北米デビュー)の多い欧州勢もマセラティまでがワールドプレミアを行った。
地元アメリカンブランドについては、GM(ゼネラルモーターズ)の“孤軍奮闘(キャデラックブランドで新型2車をショー開催のタイミングにあわせて発表)”ぶりを、フォードがリンカーンの新型でちょこっとサポートした程度なのが物足りなかったぐらいであった。
近年ではニューヨークという土地柄から、ショー開催に合わせて“前夜祭”などを行って、投資家などへ積極的に情報発信ができるとの意味で重要視するメーカーもあった。
今年1月のデトロイトショーが“肩透かし”という表現は似合うほど、ショーデビューモデルも少なく、スカスカ感が強かっただけに、「どうしちゃったの?」と思うぐらいニューヨークショーは近年になくニューモデルに溢れていた。
そんなことを思いながら会場内を取材していると、アメリカの自動車業界ウォッチャー氏から非常に興味深い話が聞けた。
「ここのところデトロイトショー絡みのニュースがメディアを賑わせています。メルセデス・ベンツとBMWが来年(2019年)のデトロイトショーへの出展を取りやめるというのです。その後デトロイトショーは、2020年開催回分から10月に開催時期の変更を検討しているというのです」。
さっそくメディアの報道を確認すると、メルセデス・ベンツとBMWの件はそれぞれ正式にはコメントが出ていないものの、関係者が情報発信しているのは間違いないようだ。またデトロイトショーの開催時期変更についても主催者サイドはかなり真剣に検討している様子が報道されている。
まだまだメディアの報道がベースになっているので確定情報ではないが、今年の今までにない、盛り上がりを見せるニューヨークショーの会場を歩いていると、かなり真実味を帯びている話と考えていいだろう。
新興国各地で開催されるオートショーの存在感が強まる中で各メーカーとも、“選択と集中”ということで、世界のオートショーへの出展の絞り込みを行っている。東京モーターショーも、中国でのオートショーの存在価値の高まりにより、今では単なるローカルショーに成り下がろうとしている。東京だけでなくあのフランクフルトショーでさえも出展を取りやめるメーカーが出てきている。
デトロイトショーもアメリカンブランドの急速な弱体化や、直近でラスベガスにて開催されるCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)の注目度が高まってEVの普及なども影響して自動車メーカーの積極的な出展も目立っており、ここ数年は毎回「デトロイトショーは大丈夫か」といった話が会場のそこかしこでされていた。
またニューヨークショーや2月に開催されるシカゴショーのような、全米トップクラスの規模を誇る大都市に比べ、デトロイトでは都市の規模も小さく周辺にも大きな都市がないので、トレードショーとしての効果も、とくに高額車種を多くラインアップするブランドからは「もともと潜在需要も少なく、出展メリットも薄い」との話もあったようだ。
デトロイトとは異なりニューヨークなら、前述したような投資家やアナリストのほか、メディア関係者も比べ物にならないくらい多いし、情報発信力という点でのメリットだけでなく、周辺に大都市も多いので来場者数も期待でき、新車販売促進という面でもかなり高いポテンシャルを持っているのも確か。
アメリカ国内だけでなく、世界的にもニューヨークショーの存在価値というものは、今後ますます高まっていきそうである。