新開発V6ツインターボ搭載! 新型レクサスLSの走りを支えるパワートレインに迫る

モジュール化により超ロングストローク型に

 レクサスLS500でデビューしたのが、新開発のV35A-FTS型エンジン。先代のLS460に搭載された自然吸気のV型8気筒4608cc、1U-FSE型に代わるもので、V型6気筒3444ccをツインターボ化し、ダウンサイジングしながらも、新しいLSにふさわしい圧倒的な動力性能と静粛性、そして将来を見据えた環境性能を備えている。

新型レクサスLS

 このエンジンは、新型カムリに続くトヨタのダイナミックフォースエンジン・シリーズの第2弾で、基本骨格から作り直した新設計エンジンだ。トヨタのV6エンジンにはGR系があるが双方の共通性はなく、生産ラインから新規に立ち上げたものである。
新型レクサスLS

 ダイナミックフォースエンジンで共通なのが、ガソリンエンジンとしてはかなりのロングストロークに設定したことだ。カムリ用のA25A型のボア×ストロークは87.5×103.4㎜、LS500のV35A型では85.5×100㎜に設定されている。それぞれのストローク/ボア比では、A25Aが1.18、V35Aが1.17。これは今後のトヨタエンジンでは、キャパシティに関わらずストローク/ボア比を1.1から1.2にしたモジュール型の基本骨格を持たせて、全シリーズで統一した燃焼デザインとするためである。
新型レクサスLS

 そのいい燃焼の基本となるのが、吸気行程で発生するタンブル(縦渦)を大幅に強化すること。ストレート型吸気ポートと画期的なレーザークラッドバルブシートによる抵抗の少ない吸気流路として、ピストンを長くストロークさせることで吸気を十分に加速しながらシリンダー内に取り込むようにしている。
新型レクサスLS

 今回ツインターボエンジンの設計を担当した山崎大地さんは次のように話す。

「新エンジンではロングストローク化し、タンブル強化およびSV比を低減。骨格構造から燃焼素性の向上を図り、出力性能と燃費効率を高い次元で両立させました」

 燃焼室の混合気は、十分に撹拌され流動が激しいほど点火後の燃焼が急速になるとされ、タンブル流で作られた「乱れ」によって急速燃焼を実現している。これによりピストン位置が高い状態でシリンダー内圧を上げることができ、その分だけ動力に変換する効率を高くすることができる。当然ロングストローク化するとエンジンの摩擦抵抗が増えるが、急速燃焼の効果はそれを上まわり、熱効率はよくなっている。なおロングストロークでは高回転化が難しくなるが、将来性を加味して、7000rpmまで回せる設計としてある。
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 V35A-FTS型のエンジン出力は、最高出力が310kW(422馬力)/6000rpm、最大トルクが600N・m(61.2㎏-m)/1600-4800rpmという強大なもの。これも、エンジンありきというよりは、LSとしてあるべき動力性能を決めたうえでの結果だという。0-100㎞/h加速での力強さはもちろん、高速道路での登坂や追い越し加速のような高めの車速でも、シフトダウンせずにアクセルを踏み込むだけで済むような、リッチなトルク感で加速するラグジュアリーカーにふさわしい動力性能が得られる目標出力を算定。その結果、1600rpmで600N・mという最大トルクが必要と判断し、それが実現できるエンジンのキャパシティやスペックを設定したという。
新型レクサスLS

 エンジンのコンポーネントを見ていくと、シリンダーブロックはアルミ製で鋳鉄ライナーを鋳込んだもの。ターボ化による大トルクに対応し、LSにふさわしい低騒音、低振動を実現するため、軽量化に配慮しつつも各部の強化を行っている。とくにクランクシャフトの曲げやねじれモーメントが大きくなるため、高剛性クランクシャフトは新採用のラダーフレーム型クランクケースで強固に保持するようにしている。

 シリンダーヘッドは、高効率な吸排気のポート形状を持たせているが、吸気のレーザークラッドバルブシートはレクサス初となるものだ。排気のマニホールドはヘッド内蔵型となっていて、ヘッドの後端に大きくオフセットしながらひとつにまとめられてターボへ導かれる。
新型レクサスLS

 ツインターボシステムはエアクリーナー、スロットルバルブ、インタークーラー、ターボ、触媒までバンクごとに完全に独立させたレイアウトになっていて、吸排気の効率を大幅に高めている。ターボで過給されたエアは、各バンクのシリンダーヘッド上にある水冷インタークーラーで冷却後、ダイレクトに吸気ポートに流れていく。水冷化によってインタークーラー用のラジエータや電動ポンプが必要となるが、吸気の抵抗が少なくなるとともに温度は安定化するため高性能化ができるほか、結果的には省スペース化にもなる。
新型レクサスLS

「Vバンクごとに独立した水冷インタークーラーは、吸気のロスを最小限にするために最適なものです。インタークーラーで冷やした空気は最小表面積の空間で燃焼室に届けることが大切です。空冷式で長い吸気配管があったり、シングルスロットルで6気筒へ分岐させたりすると圧力損失が増えたり受熱し、結果としてインタークーラーの効果が薄れてしまいます。V35A型では、通常のシステムとは位置関係が入れ替わっていて、スロットルバルブ後にインタークーラーがあるため、高温の過給エアに対応するようスロットルバルブの耐熱性を上げるなどの技術が必要となりますが、吸気の損失は非常に小さくできるようになっています」(山崎さん)


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