日本でも試験導入されたものの広まる兆しはない
信号機のない円形交差点。それがラウンドアバウトだ。欧米人の発音は、最初の「ラン」にアクセントがついて「ランナバウト」のように聞こえる。日本では一部の都市で試験的に導入したことがあるが、全国的に広まることはない。世界各地にラウンドアバウトは設置されているが、なかでも多いのがヨーロッパだ。
つい先日の今年3月上旬も、筆者はスイスとフランスでレンタカーを運転した。朝晩の渋滞を避けるため、目的地からホテルまで約15kmの道のりをグーグルマップの指示どおりに行くと、ざっと20のラウンドアバウトを通過することになった。皆が我先にとラウンドアバウトに入ってくるが、それは「阿吽の呼吸」での譲り合いで、ラウンドアバウトの中で交通が滞ることは滅多にない。ラウンドアバウトをグルグル走っていると「私は今、ヨーロッパにいる」という気持が高まってくる。
ラウンドアバウトと連結する道の数と道の広さによって、ラウンドアバウトの大きさはいろいろある。その中でも最大級なのが、フランスはパリの凱旋門だ。凱旋門を中心に、まさに放射線状に道が広がっている。もっとも広いのが、シャンゼリゼ大通りだ。
そんなパリの凱旋門のラウンドアバウトに旅行者が気軽にレンタカーで入ってしまうと、あらら大変。入ったはいいが、行きたい方向に出ることができず、もう一周、さらにもう一周と回っていると、どんどん輪の内側に追いやられてしまい、いつまで経っても出れなくなることがある。これを冗談で「グルグル回って、そのうちバターになってしまうよ」と、欧米の童話にたとえて表現される。
では、ラウンドアバウトと普通の信号機がついた交差点、どちらが交通にとって効率が良いのか? 上記のパリ凱旋門など、歴史的な建造物がある場合を除いて、欧州では一般的に、都市の中心部ではラウンドアバウトは少ない。一方で、地方都市の高速道路の出入り口や、田舎道などでは信号機付き交差点よりもラウンドアバウトを採用している。
つまり、ある程度までの交通量ならば、信号機によって数分間の一旦停止するよりも交通はスムースに流れるということだ。
ただし、ここで重要なことは、運転者による運転の自己責任に対する考え方だ。ラウンドアバウトへの出入りのタイミングを一歩間違えば、衝突事故につながる。日本では赤信号で止まるたとにひと息つくことができるが、ラウンドアバウトになると運転中はいつも緊張していなければならない。
さて、あなたはラウンドアバウト派、それとも信号機付き交差点派、どちらか? まあ、近い将来、完全自動運転の時代になれば、すべての交差点がラウンドアバウトになってしまうかもしれない。