日本でも「タクシーのチップ」が支払われるケースとは

ドラマではお馴染みの「お釣りは結構です」が実質的なチップに

 “日本では馴染みは薄いが海外では当たり前”ともいえるのがチップ。筆者が海外出張のお供に持って行く、個人旅行者向けの旅行ガイドブックにも、それぞれの地域のチップ事情が掲載されている。ただし、チップの習慣がある地域だからといっても義務的に渡すものではない。提供を受けたサービスへの満足の対価として、あくまで気持ちとしてチップを渡し、そしてその額も目安などはあるものの、提供を受けた満足度によって増減させるものである。タクシー

 アメリカではレストランのウェイターやウェイトレスへは、食事代のおおむね12%分をチップとして渡すようにとデトロイトで知り合った地元の人から教わった。それをベースとして計算しやすいので、たとえばタクシーならば、メーター料金の10%を目安にタクシー乗務員にも渡すようにしている。あとは道中で会話が盛り上がったりしたときにはさらに追加してチップを渡すときもある。

 アメリカ以外の国でも、多いか少ないかはよくわからないが、10%をベースにチップを渡すようにしている。重たい旅行用スーツケースなども率先してタクシーから積み下ろしをしてくれるので、筆者はあまりチップ文化が浸透していない、もしくはチップがいらないとされる国でもチップを渡すようにしている。

 ASEAN地域などの新興国では、国によってもちろん変わってくるが欧米ほどチップが常態化しているようでもなく(外国人は渡すひとが多いようだが)、乗務員によっては「お釣りはいらないよ」などと言うと、目を白黒させて喜ばれたりする国もある。かと思えば、逆に中国では「チップが少ない」と言われたこともある。基本的に諸外国では、タクシーを利用すると重たい荷物の積み下ろしは乗務員が率先して行ってくれるので、その流れで見てもチップを渡すことにはそれほど抵抗はない。

 ちなみにアメリカで聞いた話ではレストランなどでは、サービスに満足できなかったときには抗議の意味もこめて、わざわざテーブルに硬貨を山積みにしていくとのこと。また、チップの習慣が当たり前といわれるアメリカだが、近年は「チップを計算して渡すのが面倒」とか「渡したくない」というひとが、ショッピングモールのフードモールなどで好んで食事をすると聞いたことがある。

 それでは日本のタクシーにおけるチップ事情はどうなっているのだろう。テレビの刑事ドラマなどでよく、「前のクルマを追ってください」と言ってタクシーに乗り込むシーンがある。そして追跡車両が目的地に到着したので、タクシーを降りるときに「お釣りは結構です」とうセリフのやりとりがある。

 容疑者などを追跡しているシーンなので、お釣りや領収書をもらっていてはストーリー上おかしいとのことでこのような演出が行われているようだが、日本でもじつはこの「お釣りは結構です」という類のチップは意外なほど多いようだ。それなりに日本でもクレジットカードなど現金以外でのタクシー料金の支払いは増えているが、まだまだ現金払いが多いので、「お釣りは結構ですよ」というシチュエーションは結構多いのである。

 筆者も仕事などで近距離の利用では、話好きな乗務員のタクシーに乗り、車内で話が盛り上がったりしたときには、「お釣りは結構ですよ」と言って降りることがある。稀だが深夜に都心から40kmほど離れた自宅までタクシーで帰ったときには、だいたいロング客を乗せたということで、饒舌になる乗務員がほとんど。その印象の良さもあり、「帰りにコーヒーでも飲んでください」と200円から500円ほどは渡すようにしている。広く世の中でチップという習慣のない日本では、それぐらいが遠慮なく受け取ってもらえるかなと勝手に判断して渡している。

 ちなみに、地方のタクシー会社(事務所)に勤務した経験のあるひとによると、「何か特別な決まり事があるというわけではありませんが、あえてライバル会社チェックなど特別な理由がないかぎりは、プライベートも含めてタクシーを利用するときには、当然自社のタクシーを利用するのがお約束です。駅前などのタクシー乗り場でも自社のタクシーの順番がくるまで待っていました。そして料金精算のときは乗務員へのねぎらいもこめてチップを渡します。『あのひとはこの前●●●円しかくれなかった』などと、乗務員の間で噂になるのも困りますので、多少張り込んで渡していました」とのこと。これはあくまで特殊なケースとなる。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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