どうせ輸入車に乗るなら個性がほしい……ならオススメ
試乗車:シトロエングランドC4ピカソ HDi(380万円)
シトロエンC4ピカソは、日本車ではトヨタ プリウス、マツダ アクセラ、スバル インプレッサ、外国車ではVWゴルフやボルボV40といった強豪が揃い激戦区となっている日本流に言うとミドルクラス、欧州流に表現するとCセグメントに属するシトロエンC4をベースにしたミニバンだ。
日本車ならホンダがシビックをベースに作ったミニバンのかつてのストリーム、外国車ならVWゴルフに対するゴルフトゥーランのような存在だ。
現行型で2代目モデルとなるC4ピカソには2列シートの5人乗りでミニバンというよりステーションワゴン的な、日本車でいえば間もなくホンダジェイドに追加される5人仕様のようなC4ピカソと7人乗り3列シートのグランドC4ピカソが設定される。
日本仕様のエンジン、トランスミッションといったパワートレインは、1.6リッターガソリンターボ(最高出力165馬力/最大トルク24.5kg・m)、2リッターディーゼルターボ(最高出力150馬力/最大トルク37.7kg・m)の2つのエンジンに、どちらも6速ATが組み合わされる。
グランドC4ピカソは走り出す前にいかにもシトロエンらしいアバンギャルドなインテリアが、クルマ好きだったらツボにハマってしまうのではないかと思う。
まず驚くのは頭のすぐ手前まで伸びるフロントウインドウ(そのためサンバイザーも前後に可動する)と、ルーフもほぼ全面ガラス張りになっていることも含めたガラス面積の広さだ。
取材当日は晴天だったものの、気温は低く風も強かったため寒い日だったのが、グランドC4ピカソは晴天であれば暖房を入れなくても車内はポカポカどころか暑いくらいで、お日さまの偉大さを痛感すると同時に、春や秋という過ごしやすい季節でも「C4ピカソの車内は暑くて困るのではないか」という余計な心配をしてしまったほどだった。
加えて初めはちょっと戸惑ってしまうシフトレバーや、「良し悪し」、「好き嫌い」は別にして、乗員1人1人のスペースが明確に区切られた二列目と三列目のシート(三列目の広さは「一応座れる」といったところで日本車のミニバンに比べると明らかに狭い)、二列目の乗員用に旅客機か新幹線のようなテーブルが用意される点なども面白い。
乗ってみてもディーゼルエンジンは力強いが、騒音や振動は現代のディーゼル車としては大きめで、ATも日本車の基準で見るとシフトアップのタイミングは若干遅く、悪く表現すれば少々のクセのようなものはある。しかしクセというのも考え方によっては個性とか料理なら味のようなものであり、グランドC4ピカソのクセを筆者は許容できる範囲でもあるので、「ヨーロッパのミニバンらしい個性や味がある」と評価したい。
そしてクセではなくグランドC4ピカソの大きな魅力なのが乗り心地で、よくシトロエンの乗り心地を形容する時に使われる「雲に乗っているよう」という言われる言葉どおりにしなやかで、日本人がイメージするシトロエンそのものであった。
力強く、巡航中だと心地よいエンジン音がして燃費もいいディーゼルで、シートも含めて乗り心地も快適なグランドC4ピカソとなら「燃料が尽きるまでどこまでも走れそう」と感じたくらいだ。
まとめると「外車という、日本車が充実した日本では必要性の薄いものを買うなら、とにかく個性的なクルマ、ミニバンが欲しい」という層には大いにオススメだ。
また、日本車のミニバンなら王者アルファード&ヴェルファイアも買える価格帯であるが、三列目の使用頻度が少ないのであれば、SUVにミニバンの要素をミックスしたマツダCX-8を買うような感覚でグランドC4ピカソを選ばなくとも検討するだけでも面白いのではないだろうか。