クルマを操るという楽しさを存分に味わうことができる
21世紀になって大きく変わったのがクルマ選びの基準だ。ファミリーカーは、セダンではなく使い勝手のいいミニバンやクロスオーバーSUVに取って代わられている。また、スポーツクーペも激減した。高性能エンジンを積むスポーツモデルは販売価格も高いから、昔から販売台数は少ない。が、今は数えるほどしかなくなり、絶滅危惧種といえる存在だ。だが、究極の走りを目指し、エンジンも足もいいから、魅力的なクルマが多いのである。
1)レクサスRC F
レクサスRCは、日本では数少ないプレミアムスポーツクーペだ。2リッターの直列4気筒エンジンにターボを組み合わせたRC200tは、エンジンパワーを存分に使い切ることができる。
トルコン式8速ATも小気味よい変速フィールだ。ハンドリングも軽快である。セダンのISよりホイールベースを短くしているから、気持ちよくノーズが入るのだ。後輪駆動ならではのリヤの動きが絶妙で、操る楽しさは格別である。
なかでも別格なのはRC Fだ。多くのクルマがダウンサイジングし、気筒数を減らしている。だが、RC Fは5リッターの大排気量で、しかもマルチシリンダーのV型8気筒DOHCだ。大排気量なのに7000回転まで軽やかに回り、応答レスポンスも鋭い。自然吸気ならではのダイレクト感覚で、パンチ力も文句なし。
奏でるエンジンサウンドも官能的だ。もちろん、ハンドリングも冴えている。意のままに操っている感じがいい。狙い通りに気持ちよく曲がり、テクニックに応じて楽しめる。
2)トヨタ86/スバルBRZ
レクサスRC Fは、しかしお値段もそれなりだから、買える人は限られてしまう。300万円の予算で手に入れることができ、中古車なら200万円を切る価格で買えるのがトヨタ86とスバルBRZ、そしてマツダのロードスターだ。両車とも販売台数はそれなりだが、手に入れた後の満足度はすこぶる高い。後輪駆動のスポーツモデルというだけでも買う価値がある。
トヨタ86とスバルBRZは、トヨタが企画とデザインを担当し、スバルが開発と生産を行って誕生した後輪駆動のスポーツクーペだ。
トヨタの直噴技術、D-4Sを用いた2LのFA20型水平対向4気筒DOHCを搭載し、6速MTも用意されている。最新モデルは軽快で力強いパワーフィーリングに磨きがかけられ、高回転の伸びもいい。ボディ補強やサスペンションのチューニングも絶妙だ。気持ちいいハンドリングに加え、意のままに操る楽しさも格別である。2+2レイアウトなのも魅力だ。
3)マツダ・ロードスター
トヨタ86&スバルBRZに対しマツダのロードスターは2人乗りで、しかもオープンカーである。爽快感はライバルを大きく凌ぐ。快適性を高めた電動格納式ハードトップのRFも用意されている。ソフトトップは1.5リッターエンジンだからパンチ力は期待できないが、非力なエンジンを駆使して操るのが楽しい。
高回転までストレスなく回り、6速MTも小気味よくシフトできる。RFは2リッターエンジンだから余裕たっぷりだ。GT的な悠々とした走りも似合う。
ハンドリングは人馬一体のダイレクト感覚だ。狙ったラインに、正確に乗せることができる。振り回すドライビングを楽しむことも可能だ。テクニックを磨くにも最適であり、コンパクトサイズだから街中で扱いやすいのも美点だ。2人しか乗れないし荷物も積めないなど実用性は低いが、クルマとの付き合い方が変わる珠玉の1台である。
4)日産スカイライン
セダンではスカイラインをおすすめしたい。直列6気筒エンジンを積んでいたときと比べると、販売台数は目を覆いたくなるほど減ってしまった。R34スカイラインまでの熱狂的なファンは離れてしまい、街で見かけることも少なくなっている。だが、ステアリングを握ってみると、やはりスカイラインなのだ。最新のスカイラインは、13代目のV37系である。2017年12月にマイナーチェンジを行い、エクステリアとインテリアを化粧直ししている。
歴代のスカイラインが売りにしていたのは質の高いドライビングプレジャーだ。最新のスカイラインはインテリジェントな走りを目指し、気持ちいい走りだけでなく全方位型の安全支援システムにもこだわっている。快適性もGTの名に恥じない。3.5リッターのV型6気筒DOHCエンジンにモーターを組み合わせた350GTハイブリッドは、モーターの後押しによって瞬時にパワーとトルクが湧き上がる。V型6気筒エンジンも上質なパワーフィーリングだ。
スカイライン伝統の2リッターモデルも魅力的である。200GT-tが積む2リッターの直列4気筒直噴DOHCターボは胸のすく加速が魅力だ。低回転から過給が素直に立ち上がり、トルクも厚みがある。
ハンドリングは、スポーティかつ上質な味わいだ。ダイレクトアダプティブステアリングの採用と相まって、軽やかにクルマが狙った方向に向きを変える。コーナリングでは路面に吸い付いたかのような安定感のある走りが自慢だ。ステアリングを握るのが楽しい。意のままの気持ちいいハンドリングと軽快な身のこなしに加え、乗り心地も上質である。
5)スズキ・ジムニー
もう1台は旧態依然としたラダーフレームのクルマ。ジムニーと、その兄貴分のジムニーシエラを推薦したい。現行の3代目がデビューしたのは今から20年も前の1998年だ。はしご型のラダーフレームに4輪リジッドアクスルのサスペンションを組み合わせ、世界トップレベルの高い走破性能を手に入れた。雪道はもちろん、砂地では上級クロスカントリー4WDを凌ぐタフな走りを見せつける。
ジムニーシエラは、ジムニーにオーバーフェンダーや大型バンパーを装備し、エンジンを1.3リッターの直列4気筒とした本格派のクロスカントリー4WDだ。日本では売れていないから目立たない存在だが、海外では群を抜く人気を誇っている。熱狂的なファンも多い。自然吸気エンジンだから扱いやすいし、安定性も高められている。ジムニーと違ってトラクションコントロールも標準装備だ。また、前席にシートヒーターを標準装備する。間もなくモデルチェンジすると噂されているが、デビューから20年経った今でも魅力は色褪せていない。