セダンとワゴンの剛性や空力の差で運転フィールに違いが出る
セダンもワゴンも、剛性確保のためには荷室の開口部を小さくしたいが、荷物の搭載性を考えると大きくせざるを得ない。とくに荷室の使いやすさが重視されるワゴンではなるべく開口部を大きくしたいので、剛性の確保との両立という難題が立ちはだかる。
ワゴンでは、リヤサスからの入力による車体の変形の中では、とくにリヤゲート開口部の変形抑制が大きなテーマとして掲げられており、ワゴンの販売比率が高いスバルでは長年にわたり対策が講じられてきた。
現行型レガシィのワゴン(アウトバック)では、リヤゲートやDピラーの交差する部分にセパレーターを追加することでリヤゲート開口部の骨格を環状とし、開口部の変形を抑制。
現行型インプレッサでも、ハッチバックスタイルの5ドア車のほうは最大荷室幅を拡大しつつ、捻り剛性と車体固有値を向上させるために、リヤゲート開口部まわりの構造が見直され、Dピラーの結合部にセパレーターを設けて開口部の変形を抑制する工夫が見られる。
セダンでは、リヤサスからの入力を受け止める部位がワゴンよりもリヤサス近くにあるため、バルクヘッド部をタワーバーのような補剛パーツとして使うことができる。現行型インプレッサのセダンでも、骨格のストレート化により強化したバルクヘッドでリヤサスからの入力により車体の変形を抑制している。
さらに、空力面でもワゴンはセダンよりも不利となる。レガシィではワゴンボディ後端の大気の流れをどれだけ綺麗に剥離させるかが、常に大きな開発テーマとして掲げられてきた。
このように、セダンとワゴンでは剛性や空力など、走行性能や動的な質感に影響を及ぼす部分の差が少なからず存在しているので、運転フィールにも違いが出ると言えるのだ。
セダンとワゴンの差は世代を重ねるごとに小さくなっているのも確かなので、一般道で普通に運転する分には違いを体感することはほとんどないが、サーキット走行レベルになるとその差は比較的わかりやすい。
サーキットで同じモデルのセダンとワゴンを乗り比べると、ワゴンのほうにリヤまわりの剛性不足と慣性モーメントの大きさに起因する、わずかなリヤの追従遅れや応答遅れがみられることがある。