最近増えつつある「ドライブモード」の中身とメリットとは

エンジンやダンパーだけでなくエアコン制御をする車種も

 最近のクルマは電子制御だらけで、ドライバーとクルマの間にコンピュータが入り込んでいるような状態です。ドライバーの操作のすべてをコンピュータが把握しています。そして時として、ドライバーの操作をそのままではクルマに伝えない、という処理をします。安全のため、燃費のため、排出ガスのため、といったいろいろな都合でコンピュータが翻訳してくれるわけです。ドライバーにもメリットはありますから、いわゆるコンピュータ・エイド(コンピュータによる支援)なんですね。

 その電子制御を活かして、ドライバーの運転操作に対する反応を、切り換えることを可能にしたのが、いわゆるドライブモードです。一般的には「ノーマル」「スポーツ」「エコ」などがあり、それ以外にも快適性重視の「コンフォート」やサーキット走行にマッチした「R」「トラック」、そして雪道などで役立つ「スノー」というのもあります。そうしたドライブモードをスイッチで切り換えると、確かに感触は変わり、クルマの反応も変わります。まるで別のクルマになったかのような感覚を得るケースもあります。

 切り替わるメカニズムは、エンジン、トランスミッション、サスペンション、ステアリングといったものが一般的です。エンジンは「スポーツ」にするとレスポンスが良くなり、「エコ」にするとパワーが低下しレスポンスも鈍くなります。トランスミッションは「スポーツ」だと高めのエンジン回転域、「エコ」だと低めのエンジン回転域を使うように制御が変わります。この違いは結構誰にでも体感できると思います。

 ただし単純な「エコ」は本来不要な制御です。「エコ」にして燃費が良くなる、という人はアクセルペダルの踏み方が乱暴なんです。たとえばスバルの「iモード」がそれに当たります。しかし単純ではない「エコ」もあります。たとえばホンダの「ECON」では、エアコンも省エネモードとなりますから、燃費は良くなることでしょう。こういったように、同じ「エコ」でも内容は違う場合があります。

 サスペンションは可変ダンパーによって切り換えます。しかし、そもそもスプリングの硬さが決まれば、ダンパーのセットアップもひとつに決まるはずです。ぴったりの組み合わせは1通りしかないのです。だからダンパーだけを可変にするということは、モードを切り換えると、ダンパーが足りない、あるいは硬い、といったような感触に変化することになります。

 可変にする狙いは、ダンパーの速い動きの時に減衰力を低くして、荒れた路面での乗り心地を良くするのが「コンフォート」です。それに対して「スポーツ」は、ダンパーが遅い動きの時から十分な減衰力が欲しい、ということになります。これをダンパーで機械的に実現したのが周波数ダンパーと呼ばれるものですが、ちょっとクセもありますね。

 本当ならダンパーの動きに合わせて瞬時に切り換えられればいいんですが、一般的な可変ダンパーは応答速度が遅いので難しいですね。スーパーカーやアウディが採用しているマグネティックライド・ダンパーであれば、リアルタイムに近い可変が可能です。

 もっとも意味が判らないのはステアリングの重さの可変です。重いほうがスポーティだ、という観念は一般的なようですが、ただでさえ薄いステアリングフィールがもっと感じにくくなります。ステアリングの操作力もまた、そのクルマに対して何通りもの答えがあるわけではありません。ただしタウンスピードで使う「ノーマル」を軽くしているので、「スポーツ」にした時に通常の重さに戻す、というメーカーもあるようです。ステアリングを切り換えるというのであれば、やはりギヤ比を可変としてもらいたいですね。

 ドライブモードは今後、より幅広いクルマに適用されることが予想できます。どう使うかはドライバー自身が考えるべきだと思います。良く判らない場合は「ノーマル」一択でいいと思います。おそらく「ノーマル」はそういう人のために存在します。

 あくまで個人的には、エンジンの特性はアクセルペダルだけで自在に変わってもらいたいし、ダンパーは可変機構のないシンプルでしっかりと機能するものがいいし、ステアリングは重さ自体よりもしっかりとセットアップしてもらいたいです。えっ? トランスミッションですか? それはやっぱりMTがいいですね。


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