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ディーゼルに乗るなら今しかない! 自動運転時代に訪れるディーゼル車への逆風

ディーゼルに乗るなら今しかない! 自動運転時代に訪れるディーゼル車への逆風

良好な状態を維持するためにはガソリンより細かいメンテが必要

 1990年前後だったと思います。ヨーロッパの自動車メーカーのエンジニアと話しをしていると、「ディーゼルはトルクフルで燃費もいいけど、コンディションを保つのがガソリンよりも面倒だよね」ということを言われて、ちょっとビックリしました。

 当時の日本の感覚だと、「ディーゼルはメンテナンスフリー」という意識があったからです。むしろガソリンエンジンのほうがいろいろと面倒だと思っていました。当時はコモンレール式の直噴が出る前で、ヨーロッパと日本のディーゼル技術に大きな差はありませんでした。

 その認識の違いは、要するに基準の違いです。当時日本では黒煙を吐き出そうが、大きなノイズが出ようが、とにかく動けばOKでした。しかしヨーロッパではその状態はNGで、コンディション不良と判断されます。

 当然検挙される可能性も高いです。そうした取り締まりは日本以外では常識で、たとえば日本よりも環境意識が低いと思われている中国でさえ、ディーゼルの黒煙は10年くらい前から普通に取り締まりの対象です。日本が特別、野放しになっているんですね。

 ディーゼルエンジンはコンディションを保つために、日常的なメンテナンスが不可欠だったんです。それはやはり燃焼自体が自己着火という、いわば成り行きで決まるわけで、だからこそ環境をしっかりと維持しなければ適正な燃焼が実現しないことになります。

 ガソリンエンジンでは、基本的に点火プラグで火花を散らさないと燃焼が始まりませんし、環境が悪すぎればエンジンが停止します。ディーゼルエンジンでは不適正な燃焼になったとしても、とりあえずエンジンは回ってクルマは動く、ということになってしまうわけです。

 そうした基本的な素性は、最新のディーゼルになっても変わりません。しっかりとメンテナンスする必要があります。たとえばエンジンオイルについていえば、最新のガソリンエンジンでは15000kmでの交換がスタンダードになっています。一般的なユーザーなら1年半くらいは交換しなくて済むことになります。

 しかし大量のPMを発生させてしまうディーゼルエンジンではどうでしょうか? そんなに長く持たせるとトラブルの原因になりそうです。メーカーによっては、エンジンオイルの劣化警告灯が装備されていますが、ユーザーとしてはシビアコンディションとして推奨されている5000km程度で交換したほうがいいと思います。ざっくりと計算すると、ディーゼルのメリットである燃費×燃料価格は、その半分くらいがオイル交換費用で飛ぶことになります。

 ディーゼルの場合にはエンジンオイルが薄められてしまう特性があります。DPF再生などに必要な燃料を、燃焼が終わったあとの燃焼室に噴射するためです。その一部がそのままオイルと混じってしまうんです。だからディーゼル車のオイルレベルゲージには、Fのはるか上にXのマークがあり、それ以上のレベルになってしまうと、エンジンが破損する可能性が高くなります。エンジンオイルが燃料の軽油で水増しされ、大量の薄いエンジンオイルになってしまうわけです。

 また、ガス欠は厳禁です。ディーゼルエンジンでガス欠をした場合には、構造上、燃料の経路の中に空気が入ってしまい、タンクに軽油を入れても吸ってくれません。エンジンを始動させるためには燃料経路のエア抜きをする必要があります。またガス欠状態でエンジンが稼動していた場合、燃料ポンプやインジェクターが磨耗・破損している可能性も高くなります。ただ最新のエンジンでは、ガス欠症状が出る前に、エンジンコンピュータが監視していて、エンジンが強制的にストップするものもあります。

 年々厳しくなる排出ガス規制に対応するには、高度な制御が必要になります。それにはディーゼルは向いていません。また長期間安定した排出ガス浄化性能を維持するのも、ディーゼルは難しい。さらにいえば、将来的な自動化運転を見通せば、制御精度の高さは重要であり、またメンテナンスフリーへの要求度は急速に高まることでしょう。そうなればディーゼルの可能性は極めて低くなります。

 そんな時代だからこそ、クルマ好きは今、ディーゼルに乗っておくべきなのかもしれません。

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