通行料金がなければここまで道路は整備されなかった
たとえば東京では戦後まもなく、超野心的な道路計画が立案されたが、これを税金で完成させるには約500年必要で、結局ほぼ手付かずとなった。代わりに建設されたのが、公用地(川や道路など)の上空を通すことで比較的低予算・短期間で建設でき、しかも一般道より多くのクルマを流せる首都高速道路だ。これを有料とすることで、クルマ社会になんとか対応した。
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東名や名神などの都市間高速道路も同様だった。税金では国道の整備が精一杯。なにせ当時は国道だってほとんど未舗装で、雨が降れば泥だらけという状況だ。高速道路を有料にすることで、まず借金で建設し、それを料金収入で返していくという現在の形を採用しなかったら、いまだ日本には高速道路がロクになかった可能性がある。もちろん道路公団時代にはいろいろなムダもあったが、先に造るという形を取ったのは、われわれドライバーにとって大きな恩恵だった。
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もうひとつの疑問。なぜ日本の高速道路料金はこんなに高いのか。フランス、イタリア、韓国、中国など、有料道路制を採っている国はほかにもあるが、日本はそれら各国の数倍も料金が高い。理由は、建設単価が数倍かかるからだ。
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日本は地形が険しく、地価も高く、地震がケタはずれに多い。平野部は地盤も軟弱、そしてどこにでも家屋がある。環境が極めて特殊なのである。耐震基準を落とせば建設費は大幅に縮減できるが、阪神大震災の教訓により逆に強化された。こうして考えて行くと、高速道路料金が高いのは、日本の宿命かもしれない。
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