若者ならではの発想にオドロキ! 将来の活躍に期待
先日開催された大阪オートメッセで、自動車関連の学生さん達のトークショーを行った。すると、とっても興味深かったし面白い! 聞けば自動車関連の学校に行くと就職率100%なんだとか。その割に、どんなことをやっているのか知られていない。そこでコチラも若手女子ライターの今泉 史さんを取材に送り込んだ。
各メーカーやショップが趣向を凝らしたカスタマイズカーがずらりと並ぶなか、ひときわ異彩を放つクルマが展示されていたのは、これからの自動車業界を担う学生たちのブースだ。出展学校は、埼玉自動車大学校、HAL大阪、ホンダ テクニカルカレッジ関西、日本自動車大学校の4校。
○埼玉自動車大学校
展示されていたWiLL式戦闘機は、東京オートサロン2018の学校対抗カスタムカー選手権で優勝した力作である。リヤドアを翼に見立てたガルウィングや、ジェットエンジンをイメージしたウーファーボックス、機関銃、サイドビューカメラ、スス汚れを再現したボディ塗装など、モチーフにしたステルス戦闘機のエッセンスが随所に見られる。
インテリアも手縫いのシートや輸送機に似せた後部座席、操縦席を思わせるステアリングなど、細かいところまでこだわりが詰まっていた。ランボルギーニ・アヴェンタドールを連想させる六角形のステンレス製4本出しマフラーなどもハンドメイドで1から手がけ、製作期間はおよそ5ヶ月かかったそう。
取材に応じてくれた皆川さんは、お父さんの影響でバイク好きになり、この学校を選んだそうだが、現在はこだわりのマイカーを持つクルマ好きでもある。今後の活躍に大いに期待したい。
○HAL大阪
車両とともに地球の様々な地形を再現したジオラマが迫力満点。「メカモン」と名付けられたマシンは、バギーをイメージし、陸も海も、勾配50度の坂道も、ありとあらゆる場所をガンガン走れるマシンとして、エンジンを積めば実際に走行することも可能だ。
マシンだけではなく、セットの山肌や下に散らばせた小石まで、細部に渡りリアルさが追求されており、手に取るまで本物だと思っていたほどであった。これらのセットは、3人で朝の9時から夜の9時まで、力を合わせて製作したそう。メンバーの1人である福井さんに話を聞くと、大手自動車メーカーに就職が決まっているそうで、デザインの場で自らのセンスに磨きをかけていきたいと話してくれた。
○ホンダ テクニカル カレッジ 関西
展示車両は、実際に出場した学生フォーミュラーだ。乗員に対する安全条件やホイールベースなど細かくレギュレーションを守りながら、車両の方向性、レイアウト、解析、図面を作成し、ほとんどの作業を自分たちの手で作り上げていく。
今回のモデルのコンセプトは、軽量、コンパクト、高出力の3つ。軽量化とコンパクトを実現するために、2ペダルを採用。バイクのようなクラッチレバーをシフトレバーにつけることで小型化に成功した。結果、目標のパワーウエイトレシオを達成し、前年モデルと比較して加速力がアップ、走行会では3秒以上速い結果を得られたそうだ。
運転席に座せてもらった。視点がかなり低く、身体をすっぽりと包むコックピットはまさにレーシングマシン。無駄を省きつつ、かっこよさを出したかったという透明のフロントフードは、車高が低く見えるように取り付ける場所を工夫しているそうだ。
取材をした泉さんは、卒業後はエンジン類の開発に携わる仕事をするという。このマシンの製作過程における失敗から学んだことや、経験を生かし、さらなる飛躍を遂げてほしい。
○日本自動車大学校(NATS)
最後に紹介するのは、20年連続でカスタムカーコンテストに出場し、数々の賞を獲得している日本自動車大学校(NATS)。今回は2台のカスタムカーが展示され、多くの人が足を止めて注目していた。
ミニクーパー100周年記念モデルとする「NATS MINI REBORN」は、もしミニクーパーが100周年をイメージして作られた未来のクルマ。過去と未来の融合をコンセプトとし、アルミを叩き出して作成したという前後のフェンダーは、素材をあえてむき出しにすることで、UFOのイメージを持たせた未来的デザインとなっている。
車高は低く設定されているが、エアーで上下し車高を変えることが可能だ。タイヤを隠すことで、走行している姿が浮遊しているかのように見えるとのこと。フェンダー同様に、屋根もアルミ材を採用。美しい滑らかな丸みを作り出すための、アルミ板からの叩き出し作業が一番苦労したそうだ。
東京国際カスタムカーコンテストのSUV部門にて最優秀賞を受賞した「NATS VELLFIRE PICKUP」は「高級車を切ってみたい!」という学生の大胆な発想から生まれたクルマである。
ヴェルファイアのフロント部とバックウィンドウ部を繋げ合わせ、リヤ部を荷台のように作り替えている。ボディ中央の座席などは全て取り除いた状態だ。
内装は、豪華な仕様のまま残したいというこだわりから、木目調のインパネなどをヴェルファイアそのままとし、ラグジュアリートラックへと変身させている。トラックの荷台のつなぎ目も深く切り込みを入れて接続部分をリアルに再現。1台のヴェルファイアから作り出したとは思えない仕上がりであった。
池田先生にインタビューするとものすごいクルマ好き。1969年式のトヨタ クラウンを2台所有しており、通勤には2ストエンジンのジムニーを使用しているそうだ。学生たちに興味を持ってもらえたらと、愛情あるコメントをいただけた。
若者のクルマ離れが進んでいると言われているが、情熱や自らの湧き出る感性を持った若者たちだってたくさんいる。今後の日本のクルマ業界を牽引していくであろう若いパワーに、イベントなどを通してもっと目を向けてみてほしい。