見た目のカッコ良さの追求だけではない!
世の中のスポーツカーは、車高そのものも低いが、最低地上高も総じて低い。保安基準では最低地上高は9cm以上と定められているが、ホンダNSX(NC1)や日産GT-R(R35)などは、ノーマルでも最低地上高は11cmしかない。
漫画「サーキットの狼」で、風吹裕矢がロータス・ヨーロッパのスタビライザーを打つシーンが出てくるが、ロータス・ヨーロッパのスタビの位置=最低地上高は12cmだったことを考えると、最新のスポーツカーの最低地上高はけっこう“攻めている”。(タイヤと連動して上下する部品の下端、自由度を有するゴム製部品、樹脂製のエアロパーツなどは、9cm以上の規程に含まれない)
ではなぜスポーツカーの最低地上高は低いのか? 主な理由は3つある。
1)低い方がカッコ良く見えるから
美術やデザインの世界に、誰もが美しく感じる、黄金比、白銀比、青銅比などの法則があるように、カッコいいスポーツカーのデザインにもセオリーがある。簡単にいえば、ロー&ワイドでウエッジシェイプ(くさび形)。そして“小顔”=キャビンが小さく、出るところが出ている(=タイヤは太く)スポーツカーならではに見えるというもの。というわけで車高を低くすれば、手っ取り早くスポーティーなルックスが手に入る。ドレスアップで、「まずはローダウン」というのも、この法則にしたがった結果といえる。
2)重心が低ければ低いほどタイヤの接地性が向上する
ふたつ目は、運動性能上の問題。クルマは加速・減速でピッチングを起こし、コーナリングをすればロールする。重心が低ければ、こうしたモーメント、とくにコーナリング時のロールモーメントが小さくなるので安定感が増し、動きが俊敏になってオツリが少なくなる。またロールが少ないということは、コーナリング中のイン側のタイヤの接地性がよくなり、四輪トータルでのグリップ力が稼げ、その限界が高くなる。
3)空力性能の向上
最低地上高が低いと地面とボディ下面のクリアランスが狭くなるので、そこを通過する空気の流速が速くなる。ボディ下面の空気の流速が高くなると、グランドエフェクト効果が高まり、ダウンフォースが多く得られる。とくに最新のスポーツカーは、ボディ下面のエアロダイナミクスを積極的に活用しようとしているので、最低地上高の高さと空力性能は直結している。
こうした理由でスポーツカーの最低地上高は低いのだが、一般公道はフラットではない部分もあるし、工事個所や段差、轍、駐車場の出入りなどを考えると保安基準どおり、最低でも9cm以上はないと何かと不便をきたすもの。レーシングカーではないので、低ければ低いほどいいというものでもなさそうだ。