思わずニヤつくスポーツカーの動き!
ルノーのモータースポーツ直系ブランドである「ルノースポール」は、ルノーとは別組織となるルノースポールテクノロジー(RST)が開発を行なう。RSTはルノースポールモデルからレーシングカーの製作まで手がけるメーカーで、F1やWRCなどのモータースポーツで培ってきたイメージやノウハウを市販モデルにフィードバック。
ニューモデルの開発やデザインのみならず、生産、販売、マーケティング、レースシリーズの開催や運営など、業務内容は多岐に渡っている。
そんなルノースポールは日本がメインマーケットである。じつはルノー・ジャポンの年間販売台数の約4分の1はルノースポールモデルで、その台数は世界のマーケットの中でも3本の指に入ると言う。つまり、ルノースポールにとって日本は重要なマーケットで、開発陣も頻繁に来日しているそうだ。
そしてルノースポールの末っ子モデルとなるが、今回紹介する「トゥインゴGT」である。じつはこのクルマ、昨年200台限定で発売すると即完売。あまりの人気の高さからカタログモデルへと昇格したそうだ。
現行モデルとなる3代目は、メルセデスベンツとの提携によりスマートとメカニズムを共用。それまでのFFレイアウトからRRへと刷新されたモデルである。ノーマルはコンパクトでオシャレなフランス車……というイメージが強いが、ルノースポールのスパイスでピリッとした刺激がプラスされている。
エンジンはノーマルと同じ3気筒の0.9リッターターボを搭載するが、吸排気系、燃料供給、エンジン冷却などの改良により、90馬力/135N・mから109馬力/170N・mに出力アップ。トランスミッションは限定車では5速MTのみだったが、今回は6速のEDC(エフィシエント・デュアル・クラッチ)を用意する。
フットワーク系は40%引き締められた前後ダンパーにアンチロールバー、専用ESCなどをプラス。タイヤはフロント:185/45R17、リヤ:205/40R17サイズを奢る。
エクステリアはGTの証の1つである左フェンダーに取り付けられたサイドエアインテーク(ノーマルはホイールアーチ上部)やデュアルエキゾースト、17インチアルミホイールやサイドストライプで差別化。
インテリアはオレンジ/ホワイトをワンポイントにしたコーディネイトを採用。アルミ製ペダルやザマック製シフトノブ、アルミ製キッキングプレートなどをプラスにより、内外装共に小さいのにちょっと生意気……な雰囲気、スポーツ一辺倒でない点はフランス車らしい部分だ。
また、日本向け専用のビルトインナビ(アルパイン製)が選択できるようになったのは嬉しいポイントだが、これを装着するとスマートフォンアプリに表示可能なタコメーターが使えない。便利さを取るか? 機能を取るか? 悩ましい部分だ。
パワートレインはすごくパワフルではないものの、小排気量ターボ特有のドーピング感は少なめで高回転まで自然に綺麗に回る。5速MTはフランス車特有のタッチは軽めでストロークは長め。ペダルはヒール・アンド・トゥもしやすいが、レイアウトはやや左にオフセットしているため、左足の置き場がないのが残念。一方6速EDC仕様は、Dレンジではツインクラッチを感じさせない低速のマナーの良さやスムースなシフトアップを見せるが、マニュアルモードを使うとシフトアップ/ダウン時にあえて“シフト感”残るのが嬉しい。ただせっかくならパドルシフトは欲しいところだ。
フットワークはRRゆえにフロントが物理的に軽いので、操舵してからノーズが動くまでのロスがない上にナチュラルなハンドリング。さらにコーナー脱出時にアクセルを踏み込むとリヤをグッと沈めるさまはまさにスポーツカーのそれなのだ。
ちなみにESCはノーマルよりも介入が遅いため、タイトターンでは後輪スライドが許容されるので、思わずニヤッとしてしまう。なので、意味もなく試してみたくなってしまったほど(笑)
快適性は引き締められたサスペンションに17インチタイヤ&ホイールで硬い/柔らかいで言えば硬めだが、決して不快ではない。たとえるならば“しなやかな硬さ”といった印象だ。元気に走っているときは軽量ボディでコーナリングはご機嫌だが、高速道路などではサイズを感じさせない重厚さも併せ持っている。そういう意味では「小さなGT」と呼ぶにふさわしい二面性のあるセットアップなのだ。
個人的にはこの乗り味には、5速MTよりも6速EDCのほうが似合っていると感じた。価格は5速MTが229万円、6速EDCが239万円と、ちょっと頑張れば手が届くのも嬉しいポイントである。
見た目は小さくてかわいいかもしれないが、中身はルノースポールの血が色濃く反映されているトゥインゴGT。その凄さはスペック云々よりも、交差点1つ曲がるだけで“直観的”に感じられるはずだ。