快適装備やシートのデキなど総合的に評価
「高速道路を使った長距離ドライブが快適、楽なクルマ」と言われたら、その条件はエンジンパワーに余裕がある、スタビリティ(走行安定性)が高い、シートのデキや静粛性といった快適性、最近急速に普及が進んでいる先行車追従型のアダプティブクルーズコントロール(以下ACC)の完成度、燃費と燃料タンクの折り合いによる航続距離の長さなど、いろいろな観点があると思う。
今回は「高速道路を使った長距離ドライブが楽なクルマ」を前回の日本車編に続き、スタビリティの高さやシートの出来の良さなど全体的にロングツアラー向きのクルマが多い輸入車から挙げてみよう。
1)メルセデス・ベンツE220d 4マチック オールテレイン
メルセデス・ベンツはシートのデキの良さ、スタビリティの高さ(運転しているととくにシャープでも鈍重ということでもないが、それが長距離ドライブでは絶妙なさじ加減で疲労の少なさにつながっている点も含む)、停止まで対応するACCや自分の車線を維持しようとするレーンキープシステムといった運転支援システムの完成度の高さなどにより、長距離ドライブの快適性が高いのは有名だ。
メルセデス・ベンツのなかでもロングツアラーとして高い性能を持つのは、やはりFR系のCクラス以上のモデルだ。とくにEクラスとSクラスの運転支援システムには進路変更のためウインカーを点滅させ、隣の車線にクルマなどがいなければそのまま進路変更する「アクティブレーンチェンジングアシスト」を搭載。さらに運転中の急な疾患などのより操作が行われない場合には安全にクルマを停止してくれる「アクティブエマージェンシーストップアシスト」も装備され、運転支援システムの性能や安全性は世界トップレベルだ。
そのEクラスとSクラスからロングツーリング用のクルマを選ぶなら、最近追加されたE220d 4マッチクオールテレインの名前を挙げる。E220d 4マッチクオールテレインは、2.2リッターディーゼルを搭載するEクラスステーションワゴンの最低地上高を若干上げた、SUVテイストも持つクロスオーバーという成り立ち。
前述したEクラスの持つロングツーリング性能の高さはもちろん、十二分な余裕ある動力性能、動き出してしまえばディーゼルということがまったくわからないほど静かで、かつ高速道路を大人しく流していればリッター20km近い燃費が期待できる。さらに悪天候にも安心な4WDな上、エアサスを使っているので車高アップも可能で、若干の悪路にも対応可能と、最強ロングツアラーの1台と断言できる。
2)ボルボV90クロスカントリーT6 AWD
ここ数年の躍進により注目が高まっているボルボの各車も、何が付いているのか把握しきれないほど充実した機能を揃える運転支援システムの完成度や、安全性の高さといった面ではメルセデス・ベンツと方向性の似た最強ロングツアラーである。
1つメルセデス・ベンツと違った、ボルボだけの世界といえるのが車内の居心地の良さだ。ボルボのあるスウェーデンが冬になると極寒であること、太陽が出て明るい日中も短いため家や車内に居る時間も長い、というお国柄もあり、ボルボのインテリアもよく言われるように北欧家具のように明るい雰囲気で、ボルボの大きな魅力の1つとなっている。
そのボルボのなかからロングツーリング用のクルマを選ぶなら、メルセデス・ベンツE220d 4マッチクオールテレインと似たところもあるが、4WDでパワーに余裕があり、ステーションワゴンをベースに最低地上高を上げたクロスオーバーで若干の悪路にも対応する点を決め手にV90クロスカントリーT6 AWDを挙げる。
また近いうちに、ミドルSUVのXC60にD4と呼ばれるディーゼルエンジン搭載車が追加され、航続距離の長さも加味するならこちらもロングツアラーとして非常に魅力的だ(おまけにXC60のディーゼルの価格はなんと2リッターガソリンターボのT5と同じだ!)。
3)テスラ・モデルS/モデルX
電気自動車=航続距離が心配というイメージが強いこともあり、電気自動車はロングツアラーとは対極の存在と思われがちだ。しかしアメリカのテスラ、大型高級セダンのモデルSは、高級車というサイズの大きさ、高い価格も許されるという車格の有利さを生かし、高価かつサイズも大きいバッテリーを大量に搭載し(現行日産リーフを基準にするとバッテリー容量は小さいほうの75kWhでリーフの約2倍、大きい方の100kWhならリーフの2.5倍!)、1回の充電の航続距離も約500から600km(実際にはその8割くらいだろうか)を持ち、ロングツーリングにも十分対応する。
航続距離だけでなく最強モデルのP100D(前後にモーターが付く4WD)なら0-100km/h加速は日産GT-Rより速い2.7秒という強烈な動力性能、電気自動車ならではの静粛性の高さをはじめ、インテリアや全体的な走りといった各部の質感も非常に高い。パソコンのように停止したままアップデートが可能な運転支援システムが介入する領域も非常に広い点など、クルマ自体の魅力も素晴らしい。
何よりも2トンを大幅に超える巨体かつ巨大なクルマが音もなく電気だけで走るというのは、カルチャーショックを覚えるほどのとても新鮮な世界だ。なおモデルXはモデルSをベースとしたリヤドアがガルウイングとなる3列SUVだ。
だが、いかにテスラの航続距離が長いといっても、テスラのバッテリーは巨大なため、急速充電器の普及が進んでいる昨今でも充電に時間がかかるのは事実。移動距離が長いとどうしてもバッテリー残量を気にした運転になりがちなのは否めない。
その問題に対してはまだ数が限られているものの、テスラだけが使える独自の超急速充電器「スーパーチャージャー」を設置しており、スーパーチャージャーを使うと2時間もあればテスラの巨大なバッテリーを満充電にすることができる。そのためスーパーチャージャーの使用を前提に、通常の急速充電器を併用したドライブ計画を立てれば、テスラで素晴らしく快適なロングツーリングを楽しむことができるだろう。