昔のトヨタやイタリアメーカーも採用していた
水平対向エンジンはピストン同士が左右対称、水平に配置され、その独特なピストンの動きをボクシング選手のグローブを打ち合わせる様子に例えて「ボクサーエンジン」とも呼ばれる。そのピストンの配置からエンジンの全高を低く押さえることができ、低重心化できるなどのメリットがあることから国産車ではスバル、輸入車ではポルシェが採用していることでも知られている。
しかし、過去にはスバルやポルシェ意外にも水平対向エンジンを採用した自動車が存在していた。今回はそんな水平対向エンジンを搭載した名車たちを振り返ってみたい。
1)フォルクスワーゲン・タイプ1
水平対向エンジンの話をする上で外すことができないいのが、「ビートル」の愛称でも知られるフォルクスワーゲン・タイプ1だろう。空冷の水平対向4気筒OHVエンジンをリヤに積んだ同車は、1938年の試作車完成から2003年の生産終了まで、一貫して水平対向エンジンを搭載していた(もちろん途中で排気量拡大などの改良はあったが)。
このタイプ1は、のちのポルシェ356の基となるポルシェ・タイプ64のベースにもなっており、タイプ1がなければ今のポルシェはなかったといっても過言ではない偉大な名車と言えるだろう。
ちなみに水平対向エンジンは、同規模の直列エンジンと比べて冷却風を受ける面積が広くなるため、空冷エンジンに向いているという利点もあった。
2)トヨタ・スポーツ800
「ヨタハチ」の愛称でお馴染みのトヨタ・スポーツ800も水平対向エンジンを搭載した名車のひとつ。搭載された水平対向2気筒のOHVエンジンは、当時のトヨタの大衆車であるパブリカに搭載されていたものを改良したものだった。しかし徹底した軽量化と空気抵抗の抑制が図られたボディに搭載されたことによって、155 km/h の最高速度を達成するスポーツカーに仕立てられた。
しかし、当時の日本では自動車はまだまだ高級品であり、実用性に乏しい2シーターのスポーツカーは販売面では苦戦し、およそ4年間の販売で総販売台数は3000台ちょっとであった。そのため現在では高値で取引されている同車両。先日行われた東京オートサロンで開催されたBHオークションでは、同型車が946万円で落札されたようだが、ちなみに新車時の販売価格は59.5万円である(もちろん貨幣価値が違うため単純比較はできないが)。
3)アルファロメオ145
ここまで古いモデルが連続したので、最後はやや新しいモデルを紹介したい。それは、アルファロメオの小型ハッチバックの145だ。1994年にデビューした145は1996年から日本にも正規輸入されていたが、2リッターのツインスパークだけ。しかし、本国では1.7リッターの水平対向4気筒DOHCエンジンもラインアップされていたのだ。
といってもこのエンジンは、1971年から生産されていたアルファスッドに搭載されていたエンジン(1.7リッターは1987年から搭載)をキャリーオーバーしたもの。そのため、本国でもモデル途中の1997年をもって水平対向エンジンはカタログ落ちしている。
ちなみにアルファロメオの水平対向エンジンと言えば、1983年から1987年まで生産していたアルナという車種にも搭載されていた。このアルナ、じつは日産・パルサー(N12型)の兄弟車であり、日産との合弁会社の工場で生産されていたもの。「日産の退屈なデザインと、アルファの信頼性の低いメカという最悪の組み合わせ」などと揶揄されることもある車両だが、このときの経験が両社の今に生きていると信じたいところだ。