戦闘機の翼に使われた軽量かつ固いアルミ合金
日本が世界に先駆けて実用化した技術というのが、いくつかありますね。たとえばリチウムイオン電池がなければスマートフォンがこんなに発達することはなかったでしょうね。
リチウムイオン電池は、世界に先駆けてソニーが販売をスタートさせました。さすがに先駆者だけあって、その性能が抜きん出ているのは、いろいろなメディアのテストで明らかで、サンヨーは最後まで性能で追いつくことはありませんでした。
超超ジュラルミンという金属もまた、日本が真っ先に実用化しました。使われたのはゼロ戦です。軽くて強い金属を使って軽量化することはクルマでも重要なことですが、飛行機ではとても重要です。ましてや戦闘機ともなれば、運動性能や作戦行動距離など、戦略を左右しそうな大事な要素に、直接的に影響します。飛行機に使われてきた超ジュラルミンを研究し、それを進化させた超超ジュラルミンの開発に成功したというわけです。それがゼロ戦の主翼の構造材として使用されました。
それから80年くらい経っているわけですが、BBSがその超超ジュラルミンを使った軽量なホイールを2011年から販売しています。ジュラルミンというのはアルミ合金の中でもっとも固い金属で、これまでも多くの航空機の機体に使用されてきました。
アルミニウムに亜鉛やマグネシウム、銅を混ぜるのですが、ただ単純に混ぜればできあがるわけではありません。生産段階で、しっかりした温度管理によって、ジュラルミンへと変化していくんです。とくに熱を入れた後に、ゆっくりと冷やしたり、急激に冷やしたり、中間的な温度を維持したりすることでジュラルミンが生れるんですね。
そういった難しい生産行程になりますが、単純な形状のものは作られてきました。軽量かつ高い強度が必要なパーツに適しているので、たとえば対向4ポッドなどの大きなブレーキキャリパーはジュラルミンが一般的です。
しかしホイールのような複雑な形状になると、均一にジュラルミンへと変化させることが難しく、これまで量産化されてこなかったのです。その生産をBBSが研究開発に成功し、世界に先駆けて製品化したというわけです。そうした金属の高度な生産加工技術では、日本はいろいろとノウハウを持っているようです。