世界中のどんな環境でも需要があるタフさが狙われる
最近の統計によると、盗難されやすい国産車のトップはプリウスとなっているが、昔から国産車の盗難されやすいランキングの上位(ワースト3位以内)に挙がる代表的なクルマのひとつがランドクルーザー(以下ランクル)だ。
ランクルが狙われやすい理由は、世界でもっとも信頼性が高いとされるトヨタブランドのなかでも最高レベルの機械的信頼性を備えていること。そして、世界の本格派クロカンSUVのなかでも最強クラスの悪路走破性能を備えていることの2点に尽きる。
レンジローバーやメルセデスのGクラスなど、世界最強クラスの悪路走破性能を備えるSUVはほかにもあるが、今もなお、機械的信頼性の高さでランクルを上まわることはない。内陸部の砂漠の荒野など、もし故障などの機械的トラブルで止まったら直ちに命の危険に見舞われるような地域を走る場合、世界中の多くの人がランクルを選びたがる。たとえあなたがアンチトヨタだったとしても、命に関わるドライブをする時が訪れたら、きっとランクルを選ぶだろう。
報道番組などで某テロリストグループが旧型のランクルを乗り回す映像がらびたび流されたが、ランクルは世界中の裏組織からも羨望の眼差しを集めているため、窃盗グループにとってはドル箱なのである。
ランクルのみならず、基本的に日本車のSUVはどの国のSUVよりも高く評価されている。たとえば初代RAV4のような低年式の都市型SUVでさえ、多少ボロくなっても未舗装路だらけの国では重宝するため、日本の中古車市場では値段のつかない個体でも海外では需要が高いことが少なくない。
日本人は中古車に対する要求レベルが高いため、10年10万kmを超えた個体を敬遠する傾向があるが、世界的には10年10万kmごときは、まだまだ全然普通に乗れるクルマとして認識される。実際、わずかな整備でさらに10年10万キロ程度は楽に走る場合がほとんどだ。
国内で再販不可となった低年式・過走行の国産SUVは、選別されてスクラップにならなかった個体は旧ソ連地域や中東、アフリカなどへ渡り、バリバリの現役車として第二、第三の人生を送ることがある。
そんな大人気の日本製SUVの頂点に君臨するクルマだから、窃盗グループから狙われないはずがないというわけだ。ランクルのオーナーさんは、くれぐれも盗難には注意されたし。
余談ながら、筆者は以前、元自動車窃盗グループで今は盗難防止装置の開発をしているという人物(正直なところ、その真偽は不明)を取材した経験があるが、その人物がいうには、日常的に乗る自動車の盗難を100%防ぐ方法はないらしい。
最先端の高性能なセキュリティシステムも、自動車泥棒のプロにかかれば無力に等しいと。ただし、それでもセキュリティシステムをつけること自体は有効だという。あらゆるセキュリティシステムをも解除する技術があっても、解除するのにある程度の手間や時間はかかるものなので、複数のセキュリティシステムが付いたクルマはなるべく避ける傾向にあるというのだ。
盗む側が優先的に狙うべきは「油断やスキが見える個体」であり、盗む前に入念な下調べをしながら、そのクルマのオーナーの警戒度を見極めるらしいので、普段から盗難に対して警戒していることをアピールするのはとても有効とのこと。警察関係者の話からも、複数のセキュリティを仕掛けているクルマが盗難被害に遭う可能性は低くなるらしいので、盗難を防ぐための手立ては、なるべく多く施すのが良いようだ。