キャピタルゲインを得るよりも技術を育てるために投資
先の記事において、CESは単なる技術発表の場だけではなく、投資やヘッドハンティング、またOEM締結などのマッチングを探すお見合いのような場でもある、ということを冒頭に述べた。日産自動車はまさにその場にふさわしい発表を行ったのだ。
ルノー・日産自動車・三菱自動車アライアンスの会長兼CEOであるカルロス・ゴーンさんは、オープンイノベーションを支援する企業ベンチャーキャピタルファンド「アライアンス・ベンチャーズ」を設立することを発表し、5年間で最大10億ドルを投資するとしたのだ。
このファンドは自動車の電動化、自動運転システム、コネクティビィティ、人工知能など、新たなモビリティに焦点を当てている新興企業や、技術起業家が参加するオープンイノベーションのパートナーシップを対象に、初年度は最大2億ドルを投資するというもの。既存の研究・先行開発チームと協力しながら投資を行う分野や市場を特定して行く。また、将来性のある新興企業をアライアンスに呼び込むことも目的としている。
今や自動車をめぐる先進技術競争の、まさに生き馬の目を抜くスピード感は、自動車メーカー単体の力だけでは到底太刀打ちできないレベルに到達しつつあるということだ。コストや人員を無駄に割くこと、もしくは自社にてその分野の技術をイチから構築することの難しさを考えれば、それぞれのスペシャリストを迎えてお互いの技術を高い次元で商品化に費やしたほうがずっと早くてずっと効率的だ。このように、有能な外部者を囲い込む競争は全世界的に加速しており、事実、トヨタ自動車も昨年7月に子会社を通じ設立5年で10億ドルを有望なベンチャーに投資するというファンドを設立している。
その記者発表後に行われた、カルロス・ゴーンさんによる取材会に参加が叶った。
そのなかで印象に残った言葉は、「このアライアンス・ベンチャーズは、単なる投資のみを目的にしていない」というものだ。つまり、会社を肥やすためのファンドではなく、技術を育てるためのファンドであるということ。
また、他社との差別化においても、自信を覗かせた。これは他にはないユニークな技術やサービスを提供するためのスタートアップで、さらに利益も見込める組織を選ぶと話した。
完全自動運転に関しても、日産としてはプロトタイプではなく量産車が、次の6年のうちに出てくると思っている、ともこの場で述べたゴーンさん。そのためには技術面での準備が必要だ、ということだから、このプロジェクトの進捗は目が離せない内容になるだろう。