ハスラーのイメージを踏襲しつつもハスラーとは全然違う見た目
──クロスビーは写真で見ると本当にハスラーとそっくりのデザインですが、その狙いは?
塚原さん:作る上では小型車ということもあり違うものになると思っていましたが、ハスラーでできたスズキの小型SUVのイメージは大事にして使ってよいのではないかと考えてデザインしました。ただ、以前のワゴンR+やワゴンRワイド、Keiの拡大版だった初代スイフトのように見えてはならないと全社的に意思統一されていましたので、実車を見るとふくよかで抑揚のあるデザインになるよう、最初からデザインしています。東京モーターショーでも来場者がハスラーと見比べて「全然違う」とおっしゃってくださいましたね。
──クロスビーの内外装でハスラーから流用した部品はありますか?
塚原さん:まったくありません。ヘッドライトも、デザインはハスラーと同じ丸と四角の組み合わせですが、違うものですね。
──イグニスと同じ部品はありますか?
塚原さん:外装ではドアハンドルとホイール、それ以外ではルーフアンテナなどの細かい部品くらいでしょうか。内装はエアコンのスイッチ類が同じですが、色を高輝度シルバーに変更してガジェット感を演出しています。
──カラーリングについても強烈な個性がある、ほかのクルマにはないようなものが多いですが、その狙いは?
塚原さん:最近はユーザーがカラーを非常に重要視していますので、落ち着いたモノトーン色も用意していますが、小型車ならではの遊び心で派手にしてもよいのではないかと考えました。ハスラーも派手な色が多いのですが、クロスビーではそのお兄さんとして、小型車ならではの色を開発しています。また、ドアパネル下部のスプラッシュガードは別体になっていますので、3トーン色も設定しました。なお、スプラッシュガードはディーラーオプションで、色を自由に変更できるようにしています。
──ハスラーもそうですがクロスビーも派手な色だけではなく、昔のクルマのようなシックなカラーリングも似合いますよね。
塚原さん:そうですね。色を変えるだけで雰囲気が変わるクルマになっていると思います。
──クドいだけのデザインが多いなかで、近年のスズキ車はシンプルかつ遊び心のある、簡単なようで非常に難しいデザインのクルマが多いように思います。ぜひこの方向性を続けてほしいですね。
塚原さん:当社のデザイン部はそういう人間が多いんですよね。格好良いクルマよりも、遊び心のあるクルマのほうが好きなんですよ。もはや社風になっているような気がしますね。
──経営陣の方もそういうデザインを良しとして、それにGOサインを出すと。
塚原さん:はい。
──いくら優秀なデザイナーがたくさんいても、経営陣にセンスがなければ、そういうデザインのクルマは世に出てこないですからね。
塚原さん:こちらから経営陣に訴えて、そうしたデザインに納得してもらうこともありますけどね。先ほどお話ししたスペーシアの2トーンの塗り分けはまさにそうでしたが、実車ができあがると「いいね」と言ってもらえました。
──この方向性は、他社が真似したくとも、なかなかできないと思います。
塚原さん:初代スペーシアが他社に負けているなかで、新型では何か思い切ったことをしなければならないと、経営陣も考えていました。だからこそ今回のデザインにGOサインを出してくれたと思いますね。初代はニュートラルで誰からも嫌われないデザインだったと思いますが、やや存在感が弱いクルマでした。
──貴社にはエブリイもありますから、違いをより鮮明に出しやすく、また出すべきだったということでしょうね。
塚原さん:私はエブリイも担当しており、エブリイのようにならないポイントも理解していますので、新型スペーシアをより個性的にすることができたと思います。
──確かにエブリイは、デザインの差別化がしにくい軽1BOXのなかで、新型スペーシアとも違った「プロの道具」感がある、スッキリした個性的なデザインになっていますね。ありがとうございました。