【試乗】ミシュランの新スタッドレス「X-ICE3+」アイスはもちろんドライ路での乗り味がいい

確実に曲がりシッカリ止まる! アイス路での安心感を確認

 ミシュランの新型スタッドレスタイヤ、X-ICE3+(エックスアイススリープラス)に試乗した。この試乗は非降雪地域での使用に限った試乗会である。

X-ICE3+

 どういう意味か? 今回試乗したのは凍結した路面を想定したアイススケートリンクでの氷上加速、氷上ブレーキと氷上ハンドリング性能がひとつ。加えて一般公道のドライ路面での操縦安定性を確認するための、二種類の走行パターンを想定した試乗だから。

 テスト車のプリウスに旧型X-ICE XI3と新型X-ICE3+を装着し、まずは氷上での加速と、現実でもっとも重要な”氷上ブレーキ性能”を確認。加速は、アクセルの踏み込み量に対して空転すればトラクションコントロールが介入して、駆動力に制御がかかる度合と加速力を体感。タイヤがどれだけ路面を噛んでいるのか、空転しているのかがわかる。

 限られたアイススケートリンクのスペースだけに、加速し車速が15km/hに達した瞬間から”フルブレーキング”。搭載した計測器により正確な車速と制動距離を測定する。

 感触的には新型の路面を捉える感触に粘り気がある。つまりグリップ感があるのだが、そこが新型に採用された表面再生ゴム・Mチップと呼ぶ配合物質のゴム=コンパウンドと、回転方向指定のトレッドパターンの威力だろう。旧型は、爪先だった希薄なグリップ感で空転の量が多く感じられる。

 肝心のブレーキ性能は、制動距離の計測でもやはり旧型はABSの介入が早く平均8.3m。キュッキュッと路面との摩擦感、接地感を音で伝えてくる新型X-ICE3+は7.7m。

 わずか60cm!? いやわずか15km/hの車速からでもそんなに違うのか!! と驚くべき進化だと言える。

 そうした路面を噛む感触、いわゆる接地感は障害物に見立てたパイロンをすり抜ける際も同様。舵角を与えた初期の反応から、どことなく滑りながら曲がる旧型に対してX-ICE3+は確実に曲がる。旋回しながらアクセルを踏み込むと違いはさらに拡大する。

 舵角の方向に駆動力を伝える新型は、曲がるがゆえに旋回速度そのものを高く引き上げることを可能にする。旧型は旋回加速すると、外へ外へとはらんで行く。

 ごくわずかだが、この低速域での明快な違いは、タイヤが路面を捉えているのか、滑っているのかを手応えとして、ステアリングへの反力、切る力と戻る力の関係からも確認しやすい。

 ただし、これはあくまでも比較するための目安でしかない。現実の道路、しかもアイスバーンにこれほど真っ平らな路面状況は有り得ないからだ。その意味では一般公道でのドライ走行こそ日常感覚で試乗できた。

 今回は高速道路の設定がないため、タイヤの撓みや捻れ、大きな入力を与えた際の違いは確認できていない。しかし法定速度プラス程度のまさに日常走行で、段差などから衝撃を受けた際の乗り味は、まさにコンフォート系タイヤの印象である。

 スタッドレスタイヤだからソフトなのは当たり前……なのだが、ネガティブな面もある。スタッドレス故にトレッド部の柔らかさを縦方向に衝撃吸収として使い切り、トレッドブロック部を過ぎると、その下のベースの硬い部分でタイヤの縦方向のたわみが急に硬い乗り味に変化する……「という部分がないこと」に注目できる。

 柔軟性と剛性をじつに上手く、巧みに使いこなしている、という印象で、スタッドレスと知っているから「なるほど」と思うが、知らなければ上質な乗り味指向のタイヤのようである。

 旧型XI3からトレッドデザインを踏襲するため、見た目の新鮮さには欠ける新型X-ICE3+。しかしそこは日本開発のスタッドレスの5年分の技術の進化、深化が込められている。まさに旧型で劣っていた部分を強化して完成形に仕上げること、我ら日本人はこうしてコツコツと熟成させることを好むと思うがどうだろう。

 都市部でも初雪を観測するようになった。体感的には0度以下かと思うほどの冷気だが、それでも+数度はある。とは言え「雪」の文字がちらつくからには、タイヤは冬用スタッドレスに履き替える時期である。

 履き替える時期の目安は、というと、超高速走行するドイツでは、標準装着のタイヤ、いわゆるサマータイヤからウインタータイヤへの交換時期を気温が7度を下回ると交換!  とある。ひとつの目安ではあるが、それを怠り事故を起こすと、保険が降りないとも聞く。

 日本も気温から言えばとっくに交換時期である。気温が下がれば、それまでしなやかに動き、変形していたゴム類は硬化し硬くなる。それはタイヤ以外のゴム製品でも感じられるのでおわかりだろう。当然タイヤで硬化が起こると言うことは、タイヤ本来の性能が維持できなくなる。

 したがって冬用のウインター、あるいはスタッドレスタイヤは、気温が低下しても柔軟性を維持し、水分を除去するゴムと、タイヤの接地面である各種ブロックにサイプと呼ばれる切れ込みを入れて、その角による氷上でのエッジ効果、撓みや捻れを有効に使いながらタイヤの柔軟性を高め、圧雪路や氷結路でタイヤのグリップ力が活きるように作られているのだ。


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