今のクロスオーバーSUVブームで見るとRVRはイケるはず
私事であるが、最近2010年に登場した三菱のコンパクトSUVであるRVRに2日間乗る機会があった。コンパクトと書きながら4365mmという全長を見ると、コンパクトとミドルの中間と表現するのが正しいのかもしれない。グレードは内外装にあしらったオレンジ色のアクセントによるドレスアップなどが施された特別仕様車「アクティブギア」の4WDで、車両本体価格は269万2440円だ。
というのも今年で自動車メディアの人間となって、もう12年になる筆者。登場からだいぶ時間の経ったRVRのような普通のクルマでも、縁や巡り合わせのようなものでまったく乗る機会がなかったということもたまにあり、ようやく乗る機会に恵まれた次第である。
RVRというクルマは、エンジン、トランスミッションというパワートレインは1.8リッターガソリン+CVTのみということが象徴するように、カタログだけでなく実車を見てもじつに地味なクルマだ。
地味なのは乗ってみても同じで、2日間乗って残った印象は「普通」というのがほとんどであった。しかしRVRに乗って感じた普通というのは「とくに気になる点や嫌なところがなく、非常に自然」という好意的な意味で、最新のクルマでも乗り心地が悪いなど、「自分の物として毎日乗るとしたら長く付き合えるだろうか?」と思うことが多々あるのを考えれば、強いこだわりなくクルマを使うのであればRVRはなかなか悪くないクルマと評価できる。
しかし、三菱自動車のクルマは春にエクリプス・クロスという4年振りの新型車が控えているものの、燃費不正によるイメージ悪化もあるのか、堅調に売れているのはeKワゴンとeKスペースという軽乗用車。登録車では登場から10年以上が経ちながら「ミニバンとSUVをドッキングする」というコンセプトが評価され、コアなファンやリピーターもいると思われるデリカD:5が月1000台程度(これはトヨタ・エスティマ並の販売台数ですごいことだと思う)くらいで、RVRを含む残りの登録車の月間販売台数は軒並み500台以下という低迷が続いている。
RVRも昨年11月の販売台数を調べてみると214台、昨年1月から11月の11カ月間で1944台と厳しい。でもRVRに乗って悪くない印象が残ったあとで、よく見ればSUVといいながら全高がそれほど高くない乗用車に近いクルマが増えている昨今になると「着座位置が高くて見晴らしがよく、SUVらしさと視界の良さがよくバランスされている」、「195mmという高めの最低地上高と定評ある三菱の4WDの組み合わせなら雪道などの悪路ですごく頼りになりそう」、「今になるとボクシーなスタイルなのでサイズの割に車内や荷室が広い」といった美点も目に付き、「じゃあなんで売れないんだろう?」という疑問も浮かぶ。
だがRVRが売れない理由はちょっと考えただけでも、
・CMや広告を見る機会も極めて少なく、そもそも存在が知られていない
・今どきのクルマに欲しい装備が揃う上級のGグレード(4WD)の価格は254万1240円と、まだまだモデルが新しいトヨタC-HRの特別仕様車の価格(4WDで254万400円)をモデルの古さを加味して比べると、比較する気にならないくらい高い
といったことが即座に浮かんでしまう。
そんなことを頭に置きながら、「もし筆者がRVRの商品企画担当だったら」とRVRのテコ入れ策を考えると
・RVRの良さであるタフさやSUVらしさを伸ばすべく、車内は傷や汚れに強い素材に変え、ぶつけやすい外装パーツも樹脂製に変え、タイヤもオフロード性能重視のものに変え、細かいことは気にせずガシガシ使えるクルマという路線に変える
・その上で道具っぽさを強調する意味も含めて、グレードは4WDで210万円程度の破壊力ある価格の特別仕様車のみ(それこそアクティブギアという名前が似合うように思う)
というクルマなら、「クルマに強いこだわりはないけど、遊びや雪道対応のため4WDのSUVが必要」といった層に月500台くらいは売れるような気がする。
なんてことを考える前に振り返ると、古くはミラージュマリオンやギャランイグゼ、新しいところでは100万円でほぼフル装備のコルトリミテッドなど、三菱自動車はお買い得特別仕様が得意で、伝家の宝刀的存在だったのに、最近はそれすら見ないというのはとても不思議だ。
などとベッドの上で考えていたら、「低迷気味のほかの三菱車だって、拡販のために比較的手軽にできることはあるんじゃないか」と思ってしまい、次回は筆者が考える現行三菱車のテコ入れ策を書いてみたいと思う。