人気車種だったが残念ながら販売終了となるモデルも
1)トヨタ・ウィッシュ
2017年10月に販売を終えた過去のクルマだが、話の成り行き上取り上げたい。初代モデルは「セダンからミニバンへ」という需要の多かった2003年に発売されて人気を高めた。2001年に発売された2代目イプサムが3ナンバー車になって売れ行きを下げたから、実質的にその後継になっている。背の高い初代ノア&ヴォクシーとは、ミニバンの双璧だった。
ところが2009年に2代目へと刷新されたころから、次第に背の低いミニバンの売れ行きが下がっていく。ウィッシュは3列のシートを備えながら、価格は同じ1.8リッターエンジンを積むオーリスよりも安かった。しかし、販売の下降を食い止められなかった。
やがてエコカー減税も対象外になり、緊急自動ブレーキも装着されず廃止に追い込まれた。背の低いミニバンの衰退とともに、そのフラッグシップだったウィッシュも、過去のクルマになってしまった。
2)ホンダ・ジェイド
直列4気筒1.5リッターのターボとハイブリッドを搭載するミドルサイズミニバンだが、全高は立体駐車場を使いやすい1530mmに収まる。外観も5ドアハッチバック風で、3列目のシートは完全な補助席だ。サイズが小さく、床と座面の間隔が乏しいから座ると膝が大きく持ち上がり、足もと空間はきわめて狭い。頭上はリヤゲートでガラスになる。
さらに快適であるはずの2列目も、座面の奥行寸法が1列目に比べて55mm短く大腿部のサポート性が悪い。座り心地も硬めだ。結局まともに座れるのは1列目のみになる。走行性能は優れているが、ユーザーのニーズに合わず販売は低迷した。1カ月の登録台数は160台前後だから、ステップワゴンの約4%だ。
3)マツダ・プレマシー
今のミニバンでは、全高が1800mmを上まわる背の高い車種が売れ筋だ。ところがプレマシーは、全高を1615mmに抑えながらも、発売当初の2010年ごろは堅調に売れていた。背が低めで全幅のワイドな3ナンバー車だから一層不利だが、スライドドアを装着してシートアレンジも多彩だ。2013年ごろになっても、1カ月に1500台前後を販売していた。
ところがマツダは2012年に先代CX-5を発売すると「魂動デザイン」と「スカイアクティブ技術」の車種だけに力を入れて、それ以外は冷遇していった。プレマシーは2013年12月に特別仕様車の「20Sスカイアクティブ・セレーブル」を設定したあと、何のケアも受けていない。
ミニバンは競争の激しいジャンルだから、機能が優れた買い得車でも、定期的に改善を施したり特別仕様車を設定しないと売れ行きを落とす。プレマシーは従来型も堅調に売れたから乗り換えを希望するユーザーも多いが、マツダの方針に合わず、2018年3月に生産を終える。次期型の計画はない。まさに残念なミニバンの代表だ。
販売店からは「マツダはトヨタと業務提携したのだから、ヴォクシーの姉妹車でも良いからミニバンが欲しい」今のマツダのミニバン需要を将来に繋げたい。価格が2倍のCX-8に乗り替えてもらうのは無理がある」という悲痛な声が聞かれるが、マツダにその気はまったくないようだ。