あえていえば輸入車ブランドだが自動車業界全体にとってマイナス
2017年の自動車業界にはさまざまなことがあった。欧州から生まれた「EVシフト」のトレンドや世界中でチャレンジの続く「自動運転」の開発競争など、次世代の自動車に求められる要素が、ドラスティックに変わっていくことを実感できる話題も多かった。一方、日本国内でいえば東京モーターショー直前に発覚した日産自動車とSUBARU(スバル)の「不適切な完成検査」が下期でもっとも大きな話題となったのは言うまでもない。
まずは日産で発覚した無資格検査員による完成検査問題は、メーカー各社への調査指示によりSUBARUでも行われていたことが判明した。他メーカーでは、こうした事例は起きていなかったとはいえ、複数社で発覚したことで自動車メーカー全体へ対して懐疑の念が生まれたことは否定できない。さらに言えば、素材メーカーなどでの偽装発覚などもあり、日本のものづくり全体への不信感にまで発展するきっかけとなってしまったともいえる。
というわけで、問題発覚により生産を休止したり、宣伝を自粛したりした影響で販売台数を減らしたメーカーがあり、その受け皿となって多少なりとも漁夫の利を得たメーカーもあったかもしれないが、それは短期的な話。業界全体が信頼を損なったことを考えると、「不適切な完成検査」問題によって得をしたメーカーがあったとは言えない。もし、得をしたと言えるとすれば、この件を契機に完成検査が現代にあったカタチに改善され、よりユーザーメリットのあるようルール改正されたときだろう。
なお、短期的な話として2017年11月の登録車(軽自動車以外)の販売データだけに注目すれば、全体としての販売台数は25万8164台で前年同月比94.6%と落ち込んでいる。そのなかで、三菱自動車が前年同月比114.5%と伸びているのが目立つ。また、ダイハツは前年比305.9%となっている。いずれにしても、ダイハツが3041台、三菱自動車は2566台の月販という小さいスケールでの話だ。
さらに、2017年11月の販売データを前年比に注目して眺めていくと、日産が57.6%、SUBARUが87.0%と前年割れしているのは予想通りとして、ホンダが96.5%、マツダも75.7%と大きくマイナスになっている。一方、増えているのはスズキの106.1%、トヨタ101.2%、そして輸入車全体での108.2%といった具合だ。あえて損得でいえば輸入車の評価が相対的に上がったといえるかもしれない。
いずれにしても、こうした不適切な問題を業界全体でクリアにしていくことで、自動車産業への信頼を回復し「雨降って地固まる」となることを期待したい。
※販売台数や前年比の数値は自販連発表値
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http://www.jada.or.jp/contents/data/hanbai/maker.html