トヨタ史上最高のスーパーカーも2000年代の登場
「各部に外国車の影響を受けることが多く、独自性は薄い」と言われがちな日本車であるが、60年を超える日本車の歴史を振り返ると、「外国車に影響を与えた」、「強いインパクトがあった」、「世界初の技術を採用した」、「爆発的に売れた」といったエポックメイキング(画期的な)なクルマも思い出すとたくさんある。そのなかには「壮大な失敗に終わったという意味で印象的だった」というクルマも少なからずあるが、そんなエポックメイキングなクルマをメーカーごと、年代ごとに挙げてみたい。
1)12代目クラウン(2003年)
クラウンは保守的なクルマというイメージが強いが、失敗に終わったもののアヴァンギャルドなデザインを採用し「クジラクラウン」と呼ばれた4代目や日本初のスーパーチャージャー付エンジンを搭載した7代目、日本初のトラクションコントロールを採用した8代目など、技術的な挑戦を行ってきたクルマでもある。
「ゼロクラウン」というキャッチコピーも話題になった12代目クラウンは、クラウンを含めたトヨタのFR車がそれまで40年近く使っていた直列6気筒エンジンを捨て後継となるV型6気筒エンジンに移行したのに加え、クルマの土台となるプラットホームも新世代のものを採用。このプラットホームは日本で販売されるレクサスISとGSの初代モデル、クラウンとマークXの現行モデルまで長期間に渡って使われ、近代のトヨタのFR車の基盤となった。
また12代目クラウンはクラウンのユーザーの年齢層が高齢化しつつある点に危機感を覚えていたこともあり、乗り味やアスリートのスタイルをスポーティものにするなどの若返りを施し、「ゼロクラウン」のキャッチコピーに相応しい生まれ変わった革新的なクラウンとして長く歴史に名を残すだろう。
2)初代レクサスIS、GS、SC(2005年)
トヨタの高級車ブランドとして北米を中心に強い支持を集めたレクサスが、日本での展開を始めたのが2005年だった。
レクサスの開業時にラインアップされたのがそれまでのアルテッツァからフルモデルチェンジしたIS、アリストからフルモデルチェンジしたGS、ソアラからマイナーチェンジしたSCの3台である。
ISもGSも前述した12代目クラウンで登場したV型6気筒エンジンとプラットホームを使うレクサス版の4ドアセダンといったところで、今になるとクルマ自体に強いインパクトはないというのが率直な印象ではある。
しかしレクサスの日本流の「おもてなし」を強調した接客やサービス、レクサスブランドが日本に上陸した一期生という意味でのインパクトは記憶にとどめるべきものだろう。
3)レクサスIS-F(2007年)
IS-Fは初代レクサスISに5リッターV型8気筒を搭載した、当時のベンツAMG C63やBMW M3に勝負を挑んだプレミアムスーパースポーツセダンだ。
それまでの日本車には280馬力規制という大きな壁があったこともあり、400馬力級以上のスポーツモデルは日本車にとって未知の世界だったが、2007年はIS-Fに加え日産GT-Rも登場した年でもあり、日本車がそれまで入ったことのない領域に足を踏み入れたという意味でインパクトは強かった。
4)3代目プリウス(2009年)
3代目プリウスはトヨタ式の2モーターハイブリッドに改良をいくつもの改良を施したのに加え、エンジンもそれまでの1.5リッターから1.8リッターに拡大され、動力性能を向上。さらに燃費も当時の10・15モード燃費で38.0km/L(最良値)を誇っていたものの、クルマ自体は2代目プリウスのキープコンセプトで、クルマ自体にそれほど強いインパクトはなかった。
では何に強いインパクトがあったかというとズバリ価格。当時はリーマンショック直後という背景もあり、景気は世界的に冷え切っており、3代目プリウスの直前に登場したホンダインサイトが「ハイブリッドカーで189万円から」という価格で結果的には一時的ながら大人気になるなど、クルマも低価格化が進んだ。
そのなかで3代目プリウスはインサイトに対し若干の上の車格で燃費も上まわる上にVSCやサイド&カーテンエアバッグといった安全装備も完備しながら、205万円からという内容を考えると激安価格を設定。
さらに当時は政府の景気刺激策で燃費のいいエコカーには今も続くエコカー減税に加え、エコカー補助金(10万円、13年経過したクルマを廃車にして買い替える場合には25万円)もあったため、プリウスのお買い得感は強烈。1万台の月間販売目標台数に対し発売から1カ月で1年半分となる18万台を受注し、プリウスショックという言葉も生まれた。また3代目プリウスの爆発的ヒットによりハイブリッドカーは日本では完全に市民権を獲得し、この点も3代目プリウスの大きな功績といえる。
5)レクサスLFA(2009年)
LFAは10年近い長い開発期間を経て登場したスーパーカーである。
世界限定500台、日本では3750万円で販売されたLFAはカーボンボディ、V型10気筒エンジンをフロントミッドに積み、6速AMTとなるギヤボックスをデファレンシャルと一体としリヤに置いたFRのトランスアクスルレイアウトといったメカニズムを採用。最高速アタックやニュルブルクリンクのラップタイム計測などで絶対的な性能を誇った。
それに加え、ヤマハとのコラボレーションにより開発陣が「天使の咆哮」と呼ぶサウンドをはじめとした極上のドライビングプレジャーを目指したことが最大の特徴だ。
超高額なスーパーカーということで普遍性はないものの、トヨタがスーパーカーを作ったことでさまざまな経験をし、その経験が部分的なものにせよ量産車にもフィードバックされた点や、話題性という意味でもLFAを世に出した意味は大きかった。