約400年前の教えが現代にも有効! ハンドルの握り方は宮本武蔵に学べ

親指と人差し指はやや浮かせるイメージで握る

 ハンドルはクルマの進路を決めるツールだけでなく、視覚情報に次いでドライバーにインフォメーションを伝える最重要なドライビングの情報源。そのステアリングインフォメーションをキャッチするためには、ハンドルを握りしめているようではダメ。力むと掌で繊細なインフォメーションを感じ取ることができなくなってしまうからだ。ハンドルの握り方

 だからといって、指先でハンドルをつまんでいるような握り方や、指を開いて、掌を押し付けてハンドルを回すような操作も論外。そんな握り方では、道路に穴や深い轍があったときにハンドルをとられることになるし、猫が急に飛び出してきたり、何か落下物があったり、緊急回避を強いられたとき、対処が間に合わなくなるからだ。

 というわけで、ハンドルは力まず、軽く、なおかつ掌がピタッと添えられた状態でハンドルを優しく包みこむように軽く圧をかけられるがベスト。締めるのもNG、たるむのもNGとなると、その加減は非常に難しいところだが、このスキルが高いと、文字どおり「上手」「名手」と言われ、スキルが低いと「下手」となり、じつは上級者とそうでない人との大きな差がつくところでもある。

 これは、クルマのハンドルさばきだけでなく、料理人の包丁の握り方、ゴルフのクラブの握り方、バットやラケットの握り方など、およそモノを握る作業においては、すべて共通する極意ともいえる。では、もっと具体的にどう握るのが理想なのか?

 ここで思い出してほしいのは、剣聖 宮本武蔵の書き残した剣の極意書=「五輪書」だ。武蔵は、五輪書の「水の巻」に、「太刀の持ちやうの事」として、次のようにそのコツを語っている。

「太刀のとりやうは大指ひとさしを浮ける心にもち、たけ高指(中指)はしめずゆるまず、くすし指小指をしむる心にして持つ也。手の内にはくつろぎの有る事あ(悪)しし。(中略)

 総じて、太刀にても、手にても、いつくと云事を嫌ふ。いつくはしぬる手なり。いつかざるはいきる手也。能く心得べきもの也」

 要するに、親指と人差し指は浮かせる感じで、中指は締めるのでもゆるめるのでもなく(つまりニュートラル)、薬指と小指は締める“感じ”で持ちなさい、という教えだ。また、「手の内にはくつろぎ=隙間があってはいけない」とも書いてある。そして、『居着く』=力んで固着して動きづらい手は、「死に手」だよ、と……。

 ハンドルの握り方の極意も、まさにコレ!

 正直、これ以上的確な表現は、寡聞にして聞いたことがない。1645年に書かれた五輪書の極意は、21世紀のクルマのハンドルの握り方にもそのまま通じる真理だったので、ハンドルの握り方は宮本武蔵から学ぶといい。

 あとは、親指をスポークにひっかけるかどうか。これはプロでも意見が分かれるところで、危機的な状況に遭遇したとき、たとえ親指が折れても死にはしないが、ステアリングを離してしまったら死ぬ可能性があるので、親指はスポークにひっかけておく。というのがひっかける派の意見。

 一方で、クラッシュするときは、親指一本で何とかなるような外部からの入力(衝撃)では済まないので、親指を守るために、親指はスポークにはひっかけない。また、親指はハンドルの内側に沿わせた方が力みにくい、といった考え方から、親指を伸ばし気味にしてドライブしているプロも多い。

 どちらの握り方に共感できるだろうか?


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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