使い勝手と安全性も徹底的に追求した
10月27日から11月5日まで開催された東京モーターショーで、室内にも乗り込める状態でスズキのブースに参考出品。ファミリー層を中心に多くの来場者から注目を集めていた新型「スペーシア」が、ついに正式デビューを果たした!
スペーシアとしては初、その前身の「パレット」を含めれば、スズキの背高軽ワゴンとしては2度目の世代交代を経て誕生した、新型スペーシアにおける最大のポイントは、スーツケースをモチーフにしたという内外装のデザインだろう。
フラットな中に真っ直ぐな凹凸が入れられた面と、スクエア基調ながら角が丸められたフォルムは、「遊び心があり愛着が持て、毎日の運転が休日に出掛けるようなワクワク感をもたらすように」という狙いから生み出されたというが、良く言えば徹底的にシンプル、悪く言えばやや事務的だった先代までに対し、非常に親しみやすく個性的なデザインになったと言えるだろう。
エアロ仕様のカスタムは、先代のモデル末期、2016年12月に追加された「カスタムZ」のデザインテイストを踏襲しながら、標準車と同じくスーツケースのモチーフを採り入れており、押し出しの強さを備えながら遊び心もある内外装に仕立てられている。
エクステリアではさらに、フロントガラスを立ててフードの高さを上げ、ベルトラインを高く設定することで、ボディの大きさや厚みを強調。視覚的には包まれ感が増しながらも、全高が50mm、ホイールベースが35mm拡大された影響も相まって、室内幅は25mm、室内高は35mm広くなっている。しかも前後席のヒップポイントがそれぞれ30mm、15mmアップしながら前席のカップルディスタンスが30mm、ショルダールームが25mm拡大した。
なお、室内でもっともスーツケースのモチーフが色濃く表現されているインパネアッパーボックスは、ディーラーオプションで計7色が用意されており、好みの色に変えることも可能だ。
積載性も大きく進化している。後席が荷室からもスライドできるようになったうえ、格納方法がワンタッチダブルフォールディング式となり、軽い操作で素早く格納・復帰できるように。さらに、荷室の開口高と荷室高が拡大されることで、フラットなラゲッジフロアに自転車を積みやすくなった。
新型スペーシアでは、安全装備の充実も大きなトピックに挙げられる。新たに「スズキセーフティサポート」と命名された予防安全技術としては、フロントガラス上部に装着されるレーダーレーザーと単眼カメラを一体化したユニットにより、従来からの衝突被害軽減ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポート」、誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、ふらつき警報機能、先行車発進お知らせ機能、ハイビームアシストに加え、進入禁止の標識を認識しヘッドアップディスプレイで知らせる「標識認識機能[進入禁止]」を追加。
さらに、リヤバンパーに4つの超音波センサーを追加。後方の障害物を検知し、発進・加速を抑え自動ブレーキを作動させることで衝突を防ぐ「後方誤発進抑制機能」および「後退時ブレーキサポート」を新たに実装している。 なお、ヘッドアップディスプレイは、軽自動車初となるカラー表示のフロントガラス投影式となり、より少ない視線移動で多くの情報が得られるよう進化している。
また、前後左右の広角カメラで自車周辺の俯瞰映像をモニターに映し出す「全方位モニター用カメラパッケージ」には「3Dビュー」が採用され、離れた視点から全体を見渡せる「室外視点」と、対象物に近寄り車体を透かした形で見える「室内視点」の2種類から好みで切り替えることにより、発進時の安全確認が容易に行えるようになった。
プラットフォームは現行アルト以降の各軽自動車に採用されている「ハーテクト」となり、ボディ剛性アップと軽量化を両立しながら操縦安定性と乗り心地を大幅に改善。さらにR06A型エンジンには、最長10秒間のモーターによるクリープ走行を可能にしたマイルドハイブリッドと、約5kg軽量化された新型CVTが全車に組み合わされ、NAエンジンのFF車でJC08モード燃費30.0km/Lを達成している。
なお、ターボエンジンはカスタムのみの設定となっている。 デザインだけではなく使い勝手や安全性、走りの面でも大きく進化した新型スペーシアの価格は133万3800円~190万8360円。先にフルモデルチェンジしたホンダN-BOXや、Bピラーレスボディを持つダイハツ・タントといった強力なライバルの牙城を、これで崩すことができるか?