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同じ排気量のエンジンでもクルマによってレッドゾーンが異なるのはなぜ?

同じ排気量のエンジンでもクルマによってレッドゾーンが異なるのはなぜ?

どの回転域で効率的に空気を取り込むかの設計が影響

 エンジンの回転計にある赤い印がレッドゾーンで、そのエンジンの回転数の上限を示しています。一部の高性能なエンジンでは、まだエンジンの暖気が充分でない場合などにレッドゾーンが少し低い回転に表示される場合もあります。「レッドゾーンに入れると壊れる場合もあるよ」という意味でもあります。その上限は、機械的にいえばムービングパーツの設計に影響されます。しかし現実的にいえば、空気をどれだけ取り込めるか、という設定に影響されることになります。

 エンジンにとってパワーというのは、取り込んだ空気の量のことです。パワーは燃焼エネルギーなのでガソリンが必要ですが、その量は空気の量に対応するので、結局空気の量がパワーを決めることになるのです。エンジンは吸気系を介して空気を取り込みます。

 エアクリーナーはともかく、スロットルボディやインテークマニホールド、そして吸気ポートや吸気バルブを通ってシリンダーの中に空気が入っていくわけです。その時の空気の速度には限界があるので、高回転で、つまり短時間に吸気させるためには、吸気系の口径を大きくする必要があります。しかし逆に低回転で、空気の速度が低くなり過ぎるとその流れが不安定になり、空気を取り込む効率が悪化します。

 つまり、ひとつの吸気系で使える回転域は、ある程度決まってしまうのです。それがパワーバンドなんですね。

 たとえば3000rpmから6000rpmまでがパワーバンドだったとすると、吸気系を流れる速度が2倍の範囲で、効率がいいということになります。

 これは4000rpmから8000rpmまでのパワーバンドも、同じ意味になりますし、2000rpmから4000rpmでも同じです。これを拡げるには可変バルブタイミング機構や可変吸気機構が必要になりますが、それは切り換える時に必ず非効率な部分が出てしまい、トルクの谷となって現れます。根本的に解決してくれるのはターボで、最新の電子制御されたターボユニットは、かなりの幅広い領域でフラットトルクを実現してくれます。

 また排出ガス試験や燃費計測は、低回転域での走行になります。その領域での燃焼が安定していないと良い結果が出ないので、低回転からしっかりとパワーを出す、つまり空気を取り込む必要があるわけです。ということで、パワーバンドの下限は決められているようなものなので、上限もそれなりに決まってしまうわけです。高回転指向のスポーツエンジンというのは、つまり低回転を諦めて高回転を獲得しているわけで、それはカタログ燃費の数値に表れることになります。

 同じような商品性・構成のエンジンでも、それぞれのメーカーによって回転数の上限が異なりますね。それは吸気ポートも吸気マニホールドの設計が大きく影響します。とくに吸気系にスペースを与えていない場合、高回転は辛くなり、最高出力の数字が出せません。それでは困るので高回転向けの設定にしてしまうと今度は低回転が厳しくなり、高回転まで回るけど低速トルクがなくてレスポンスもダメ、といったエンジンができあがったりします。じつは技術力以上に、このあたりにメーカー間の大きな差があるんです。

 レッドゾーンまで回す意味がないエンジンもありますね。その手前でトルクが落ちてしまって、ただダラダラと回るだけ、というフィーリングになります。結局レッドゾーンもスペックのひとつでしかなく、実際のドライブフィーリングこそ重要なのです。

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