【ニッポンの名車】目指したのは感動性能! 4代目スバル・レガシィ (1/2ページ)

ここまでやるかの軽量化を実施

 デビューしたのは2003年。レガシィは初代から一貫して「どんな路面状況でも安全で快適、そして速く」というグランドツーリングカーとしての思想を追求。初代から14年目の4代目となるBP/BLレガシィではその集大成として、仕様やスペックを超えた「感動性能」の作り込みを目指した。スバル・レガシィ

 日常のあらゆるシーンで運転が愉しく、運転席に座っているだけでも満足でき、内外装を眺めているだけでも嬉しいクルマ。そして、もちろん最大の魅力は操ることに悦びが得られることを目標に開発されている。

 4代目BP/BLレガシィを名車たらしめる注目ポイントはいくつもあるが、中でも軽量化への取り組みは、今振り返ってみてもすごい。開発部門のみならず、生技、購買、鋼材メーカーを始めとする取引先などすべての関係者が一丸となって1グラムを減らすことに執念を燃やした。この関係者の一致団結っぷりは、現行型インプレッサに採用される新世代プラットフォームの開発でも脚光を浴びたが、SUBARUのクルマづくりの良き伝統のひとつといえる。

 4代目レガシィが開発された2000年代初頭、すでに世界中のどこのクルマも衝突安全性の強化や居住性確保などで重量が増加傾向にあったが、当時のスバルは「機敏でしなやかな走り」を最重視し、他に例のない「対旧型比で最大100kgもの軽量化」を実現した。

 ボディ構造の合理化や高強度ハイテン(590Mpa級高張力鋼板)のテーラードブランク工法の広範囲にわたる採用、局部剛性を上げるための新構造などを用いて、初代レガシィから継承されてきた骨格構造を全面的に見直し、荷重伝達経路の改善をはかっている。

 乗り味や性能に大きな影響を与えるリヤまわりの車体構造については、リヤサスからの入力荷重に対してリンホースメントリヤエプロンを介して広くリヤピラーに力を分散させ、さらに閉断面部材で左右を連結させる構造とし、剛性や強度の大幅な向上と軽量化を両立。同時にロードノイズの大幅な提言も実現している。

 セダンのB4では、車体前方部から片側のフレーム後端を拘束することにより、拘束していない側のリヤサス取り付け部に荷重を入力させた結果、3代目レガシィB4に対して1.2倍の剛性向上を遂げた。

 さらに、操縦安定性の良し悪しに直結するサスペンション取付部の構造も抜本的に見直されている。サスペンション取付部の車体側ボックス断面内にネジと一体化した大型フランジ座面をもつ「大座面一体型パイプナット」を設けて局部変形を抑制。CAE解析では3代目レガシィに対して1.25倍の剛性向上を確認し、振動騒音面では1.5〜2倍の剛性向上を確保したという。

 もちろん、軽くて強いだけではスバル車のボディとしては不十分、衝突安全性面でも大幅な向上を遂げている。4代目レガシィでは、なんと車体の補強材を大幅に削減しながら高剛性化を実現している点に注目だ。

 衝突による大荷重エネルギーを吸収する部位と、その反力を支持する部位に高強度ハイテンを用いるとともに、荷重分散構造を追求することで補強材を大幅に削減。衝突強度を上げながら3代目レガシィ比で20%もの軽量化と15%の曲げ剛性向上を達せ出来たというから凄まじい。高強度ハイテンとテーラードブランク工法の採用率は46%にまで引き上げられている。

 高強度ハイテンの採用率を上げると、プレス成型時に亀裂や捻れ、微細なシワが発生するなどの問題を伴うが、試験を徹底的に繰り返すことで問題を解消するのに有効な工法にたどり着く。成型シュミレーションの精度向上にもつながったという。

 ほかにも、前後バンパーまわりやリヤゲート・フードのアルミ化など、慣性モーメントや低重心化に有効な部分の軽量化も果たしている。サンルーフは2・3代目レガシィで好評だったタンデムサンルーフからツインリッド式に変更し、開放感や機能性を高めながら3代目レガシィ比で26%もの大幅軽量化を実現している。ターボ車ではデフのメンバーもアルミ化された。

 ボディ全幅は1.7mをわずかに超えてレガシィ初の3ナンバーボディとなったが、それがあまり気にならなかったのは大幅な軽量化によるところが大きい。

 また、細かいところでは、静粛性向上のための技術を見直したことでも大幅な軽量化がはかられている。3代目レガシィでは30kgにも及ぶ防音材を使っていたが、4代目レガシィでは従来の制振による防音構造から、遮音・吸音型へ発想を転換。制振材を遮音材へ置き換えた。内装部品に防音機能を備えた「吸音インパネ構造」とすることで重い防音材を省いている。

 また、4代目レガシィは「SUBARU最後のサッシュレスドア車」であることでも知られているが、ドアの開閉フィールの向上にも当時の開発担当者は執念を燃やして取り組んだ。

 この時代まで「サッシュレスドア」は合理性とスポーティな外観を両立させるSUBARU車のアイデンティティーのひとつでもあった。ドアそのものは、ドアビーム斜め一本配置やRドアキャッチャ構造の採用、パネルの軽量化、ドアガラスの板厚低減ウインドーレギュレーター&モーターアッセンブリーの小型化などにより、3代目レガシィ比で12%の軽量化を実現しているが、同時に開閉フィールなどの質感も大幅に高めている。

 一番こだわったのは「いかに軽い力で確実にドアが閉められるか」で、ウェザーストリップがたわむ時の反力、ドアヒンジまわりの摩擦力、ラッチのバネ力、ドア全閉直前の車室内圧力上昇による抵抗力など、ドア開閉時に発生する運動エネルギーを最小にすることに苦心した。

 反力を低減させながらシール性を確保した新しいウェザーストリップや、ベンチレーション性能の適正化、ドア重心の後方配置(ウインドーレギュレーター&モーターアッセンブリーなどを後方に移動)による慣性力の活用、摺動部抵抗のミニマム化(ヒンジのブッシュをテフロン化)などにより、軽い力で「コトリ」と閉まるドアの高品質感を達成している。

 ドア開閉時の入力を減らしたことで、窓枠のないサッシュレスドアの宿命ともいえる「ガラスのビレ感」も大幅に低減。ガラスの支持部となる窓肩の剛性を従来比で2倍に高め、ガラススタビライザーの適正化や取り付け部の剛性を上げることで制振効果が高まり、減衰時間を縮めることに成功。ドアサッシュを後方へ移動することでドアガラスを安定化。さらにガラス摺動部やレギュレータなどの可動部のすべてにガタ取りダンパーを追加して、ガラスのガタ吸収や経年劣化によるガタつきを抑えた。

 ほかにもドアハンドル操作荷重を下げてドアハンドルの作動ストロークを適正化したり、ワイヤーケーブルに樹脂コーティングを施して機械的なロスを最小に減らすなどの工夫も施されているが、これらにより、3代目レガシィまでとは明らかに別物感のあるドアの開閉フィールを実現した。

 今ではサッシュレスドアを採用するクルマはほとんど見られなくなってしまったが、4代目レガシィのドアは、長年にわたりサッシュレスドアにこだわってきたSUBARUの集大成。まさに、究極のサッシュレスドアといっても過言ではない。3代目レガシィまでの世代のSUBARU車は、古くなるとドアの開閉フィールに残念感が漂うものだが、4代目BP/BLレガシィは、今でもドアの感触がしっかりしている個体が多いのだ。


マリオ高野 MARIO TAKANO

SUBARU BRZ GT300公式応援団長(2013年~)

愛車
初代インプレッサWRX(新車から28年目)/先代インプレッサG4 1.6i 5速MT(新車から8年目)/新型BRZ Rグレード 6速MT
趣味
茶道(裏千家)、熱帯魚飼育(キャリア40年)、筋トレ(デッドリフトMAX200kg)
好きな有名人
長渕 剛 、清原和博

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