【試乗】期待の新星「三菱エクリプス クロス」にはランエボとパジェロらしさが同居する!
TEXT: 木下隆之
PHOTO: 小林 健
自然で素直なハンドリングは楽しさ十分
日産との提携を機に、経営を持ち直しつつある三菱は、様々な点で勢いを取り戻している。早速、新車の投入も開始された。
復活第一弾とも言えるのが「エクリプス クロス」。このところドル箱市場とされるコンパクトSUVのジャンルに、期待十分のモデルを投入したのである。
ライバルはマツダCX-5であり、トヨタC-HRだ。海外に目を向けても、BMWはX4を、ランドローバーはイヴォークを投入するなど、シェア争いは激しい。それぞれの販売が好調であることが裏付けるように、今もっともホットな市場だといってもいい。 そこを、バジェロで時代を切り開いたパイオニア三菱が見逃すわけもないのだ。
特徴的なのは、それぞれが先鋭的なスタイルにこだわっていることだ。無骨な2ボックスではなく、ややクーペ風スタイルであり、特徴的なデザインであることがポイント。
このジャンルを好むユーザーは保守的ではなく、人と違ったオシャレなモデルに乗りたがる傾向がある。エクリプスクロスは、そんなアクティプなユーザーのハートをターゲットにしているのは明らか。
開発コンセプトは「行動意欲を駆り立てる」である。凡庸なファミリーモデルではない。CX-5よりやや小ぶりでありながらC-HRより大きいというサイズ感である。
エンジンは1.5リッターターボ。8速スポーツモード付きCVTと組み合わされる。クロスカントリー志向ではまったくなく、あくまでアーバンSUVではあるものの、三菱最大の武器である4WDであり、それはバジェロやランエボで一旦の完成をみたS-AWCシステムを奢っている。
走り出してまず驚いたのは、低中回転トルクが豊かなことだった。1.5リッターという排気量の少なさを感じさせないばかりか、ターボで強引にトルクを稼いでいる不自然さもない。
CVTの制御も絶妙で、不快なラバーフィールも少ない。穏やかなアクセルオンでは無駄に回転数を上げず、必要な時だけに回転を高めてパワーを稼ぐ仕様である。回転だけ先回りするような違和感が薄いのは、そのあたりの制御によるものだろう。8速に切り分けた擬似ギヤも、スポーツ感覚を楽しませてくれた。
最高出力は120kW(163馬力)/5500rpm、最大トルクは250N・m/1800rpm〜4500rpm。数値にすれば驚くものではないが、データ以上に低中回転トルクは十分であり、高回転の伸びも悪くはない。試乗コースの都合により今回は試せなかったけれど、ハイウエイでの巡行も得意そうな気がした。
ハンドリングも整っている。伝家の宝刀である電子制御S-AWCを採用しているのは当然のことだが、切り味一辺倒ではなく、素直なハンドリングだったのは好感触。
キャラクター的には、悪路走破用のシステムではない。あくまで都会を闊歩するスタイルを重視しており、アウトランダーに盛り込んだアクティブフロントデフは省略している。
そのためか、ホイールベースが同じアウトランダーと比較すると、切れ味は大人しい。ステアリングがキュンキュンと応答し、急旋回でもグイグイと曲がろうとするアウトランダーとは異なり、自然な過渡特性なのだ。オンロード性を意識していることはその辺りからも伺える。あくまで上質な都会的SUVなのである。
ともあれ、あくまで鋭く曲がるアウトランダーとの比較での話であり、ライバルと比べるとスポーツ度は高い。軽快な印象は強いし、旋回性能も高い。その辺りは三菱のDNAを抑えようもない。ランエボ魂が滲み出るのである。
アプローチアングルやデパーチャーアングルも余裕を持たせるなど、パジェロイズムも隠しようもなく、45°の急斜面も軽々と登頂した。アーバンSUVとはいうものの、キャンプや山坂のドライブでは頼もしい相棒になるだろう。なんといっても開発コンセプトは「行動意欲を駆り立てる」なのだから。
衝突回避システムやコネクティッドなど、現代的なシステムも盛り込んでいる。三菱復活の狼煙になる予感がする。
ただひとつ気になるのは、欧州ではすでに販売が開始さているのに、日本投入は来春であることだ。街中を走る姿を、一刻も早く見たいものだ。
※試乗はプロトタイプ