驚きの上客争奪戦! タクシー配車ウラ話 (2/2ページ)

2人1組みでお得意様ネットワークを作る運転手も

 ただ、今の時代は携帯電話が当たり前のように普及しているので、上得意客を見るや自家製の名刺を渡して個人営業し、携帯電話でやりとりするのが一般的となっているようだ。実際筆者が体験したのだが、タクシー会社へ電話して自宅へ来てもらうように電話したところ、さほど時間もかからずくるとのことで自宅前で待っていた。

 しかし40分ぐらい待っていても来ないので、配車センターへ電話したら配車割り当てした車両が違う場所へ向かっているとのことで、急遽代わりのタクシーが来てくれた。代わりに来てくれた運転手いわく、「順番どおり配車されこっちへ一回は向かったようだが、途中で馴染み客から電話が入ったみたいで、そっちへ行ってしまったようだ」と説明してくれた。どうやらその運転手はそのようなことを常習的にやっているようだとも話してくれた。

 勝手に“お得意様ネットワーク”を作っても隔日勤務(1日おきの乗務)ではお得意さまのニーズには対応できない。たいていそのようなことをする運転手は専用車(自分専用)が割り当てられており、“裏番”ともいわれる同じ車両を専用とする相棒がいる。2名の運転手が交互にその専用車を使うことになるので、裏番と得意客をシェア(得意客に仕事のシフト表を渡し、裏番の連絡先なども知らせておく)しているケースも多いようだ。

 似たような動きは海外のタクシー運転手の間でも行われており、海外取材で連日同じ取材先へ行くとき、初日にホテルでタクシーを呼んでもらったら、それ以降は“明日は何時にくればいいか”と聞かれ、その運転手の仲間が日替わりで迎えに来てくれたりした。

 日本の場合、法人タクシーでは運転手の個人営業を禁止するところが多い。ただこのあたりの得意客になるかどうか見抜く力も含めた“営業力”の違いが運転手の稼ぎに開きが出てくることも事実のようである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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