特別仕様車とは販売低迷車種のテコ入れというケースが多い
「特別仕様車」という言葉を素直に解釈すれば、スバルWRX・STIに設定されたS208のようなクルマが想像されるだろう。エンジンからサスペンションまで独自にチューニングされ、450台の限定販売。価格は標準仕様が626万4000円だから、ベース車のWRX・STIタイプSに比べて200万円以上も高い。まさに「特別な仕様」だ。
このS208も特別仕様車に含まれるが、その品ぞろえはもっと幅広い。そしてS208のようなメカニズムまで手を加えた特別仕様車は少数にとどまり、大半は既存の中級グレードに上級グレードの装備やメーカーオプション装備を加えたタイプだ。これらの特別仕様車の価格は、装備を加えた割に少し安く抑えられ、商品の性格は「特別な仕様」というよりも「お買い得な仕様」になる。
例を挙げると2017年11月、プリウスに設定された特別仕様車「S・セーフティプラス」がある。プリウスS(247万9091円)をベースに、メーカーオプションの緊急自動ブレーキを作動できるトヨタセーフティセンスP(オプション価格は8万6400円)、バックカメラなどを含むナビレディセット(3万2400円)、上級のAに標準装着されるインテリジェントクリアランスソナー(Sにオプション設定はない)などを加えた。
この特別仕様車にプラスされた装備の価格換算額は約21万円だが、S・セーフティプラスの車両価格は260万7120円だから、ベース車と比べた価格上昇は12万8029円に収まる。加わる装備の換算額が約21万円だから、8万円くらいはオトクになるわけだ。
このような特別仕様車を加える一番の理由は販売支援にある。現行プリウスは発売から約2年を経過して、最近は売れ行きが下がってきた。月別に集計される登録台数を見ると、前年の60〜70%にとどまる。この状況をテコ入れするためにS・セーフティプラスを投入した。
また特別仕様車にはユーザーの細かなニーズに対応する役割もある。プリウスS・セーフティプラスは、安全性に対するニーズが高まり、経済産業省が安全装備の充実した車両を「サポカー/セーフティサポートカー」として奨励していることも視野に入れて用意された。
それでも人気絶頂の新型車に、特別仕様車が設けられることはほとんどない。特別仕様車が設定されたら、強力なライバル車の発売なども含め、何らかの理由で売れ行きに陰りが見えてきたと判断して良い。