自動運転由来の事故の可能性もあるが社会全体では安全になる
たとえば「絶対に墜落しない飛行機」を作ることは可能だと言われています。しかし、その生産コストも運用コストも膨大になり、アメリカまでの運賃が数億円にもなってしまうかもしれません。それでは現実的ではありませんね。そもそも「絶対」などというものは世の中に存在しないので、詐欺師が使う言葉の代表格です。「絶対」が付いた瞬間に、ほぼ信用ならないと思えば間違いありませんが。
自動運転もまた、そうしたバランスシートの中にあります。つまりコストと安全性のバランスの中で存在する装置に過ぎません。技術が進化していけばバランスシートが変わり、安全性が高まっていくことになりますが、どこまでいっても安全性が完璧になることはないと思います。統計的に事故の発生率や発生件数、受傷度などは低下するでしょうが、自動運転によって事故が発生する可能性は、常にあるということです。
今度はもっと身近な例を挙げます。みなさんが日常的に装着しているシートベルトですが、シートベルトによって大ケガをしたり、場合によっては死亡する場合も存在します。シートベルトの加害性といいますが、われわれの身体はそもそもシートベルトをするように設計されていません。だからシートベルトが身体に強い負荷を与える場合があるわけです。しかしその割合は極めて小さく、安全性を高めるケースがほとんどなので、総合的に見れば「シートベルトを装着したほうが安全」という結論になるのです。
自動運転だけでなく、最近のトレンドである安全運転支援も同じです。誤作動や誤認識によってリスクが高まり、そのまま事故が発生する可能性があります。自動運転に向けてレベルアップしていけばいくほど、それをドライバーがフォローするのが難しくなっていくことでしょう。ただそれでも、ドライバーが運転するよりも事故は抑止され、事故が起きたとしてもその損失は小さくなるはずです。
最後に大事なことを提案しておきます。安全運転支援機能が組み込まれているクルマに乗っている人は、必ずキャンセルスイッチの場所を確認してください。いざという時に、いつでも押せるように、しっかりと確認してください。
システムの最悪な誤作動は高速道路や幹線道路など、交通の流れが速い場所での完全停止です。もしシステムが誤認識をして自動ブレーキが作動し完全停止してしまったら、大きなリスクが発生します。そうした場合に素早くキャンセルスイッチを押してクルマを発進させることが、安全を確保する上でもっとも重要になるのです。