日常使用でも運転が楽しいと思えるハッチバック
すでにタイプRもラインアップされている新型シビックにとって、ハッチバックモデルはどのような存在なのかと言えば、セダンよりもスポーティだけどすごく特別なスポーツ性能が与えられているというわけではない。が、サイズ感がいい。
さらに高速道路のランプウエイの左カーブでボンネットのアクセントラインの盛り上がりをキーにして曲がっていった瞬間、「気持ちいい!」と思えるようなモデルだ。思い通りにコーナーリングをし、でもドライバーのスポーツモードスイッチが“オン”になるというより、鼻歌(音楽)のスイッチが入りそうな軽快さと気持ち良さが魅力。「フツーに使って(走って)いながら、なんだか運転がとっても楽しいんだよね」というタイプ。
それは欧州車のなかでも近年のフランス車の楽しさに近い。近年のフランス車はボディに高剛性感がありながら決して動きは硬くない。ボディはしっかりしている、一方でサスペンションがよく動くから人間の感覚に寄り添うようなしなやかな動きが生まれる。たとえばスキーヤーの腰から下の動き(=人間の足がサスペンションとなる)のように、走る、という感じかしら。特別じゃなくて当たり前の性能は、新世代のプラットフォームがボディの骨格構造そのものの考え方や製造方法が新しく、その結果、たとえばボディ全体の骨格先代モデルに対しボディのねじり剛性を25%向上させながら22kgの軽量をし、さらに車体前後の軽量化も進め、低重心なボディの低慣性も追求しているという。
しいて言えば、グッドイヤー製EAGLE F1の18インチタイヤが装着されており、どこか欧州車のスポーティもしくはスポーツカー的ないわゆる“シューズ”を履いていたのだけれど、それはタイヤメーカー数社にシビック用のタイヤ開発をお願いした結果だそうだ。乗り心地もいい。
そしてハッチバックでは6速MTが選べる。この6速MTの操作フィールは優しい。ついでにステアリングもクラッチも……。クラッチを緩めながらアクセルを踏み込めばスムースに1速→2速→3速……と繋がり、1.5リッターターボエンジンは太いトルクを軽々と速度に載せてくる。この軽々感が新型シビックのサイズにピッタリ。もちろん高速走行での速さや再加速の力強さも十分にある。シフトストロークもスポーツカーのような短さではなく、しかしもどかしいような長さではない。ちょうどいい。でもエキゾースト音はセダンとは違い、野太い音がドライビングをよりドラマチックにしてくれる小気味良さは特筆しておきたい。それから……フィットもそうだが6速MTでも前車追従式のクルーズコントロールが採用されている点、国産車ではまだ珍しい。シフトチェンジが必要な状況では、シフトチェンジ動作は必要だが、断続的に続くノロノロ渋滞でセットできるというのは、MT乗りにとって朗報と言えるのではないか。