海外では実際に破産した例もある
電動化ムーブメントの中で、既存・自動車メーカーの危機が指摘されている。とはいえ自動車メーカーというのは、非常に大きな規模で、関連業者の裾野も広い。そう簡単につぶれることはない、というイメージもあるだろう。一方、これだけドラスティックに状況や価値観が変わっている時代だけに、当事者に近いほど、ちょっと気を緩めただけで時代に置いていかれてしまうという危機感を持っているのではないだろうか。
記憶に新しいところでは、スウェーデンの自動車メーカー「SAAB(サーブ・オートモービル)」が2011年に破産している。ブランドだけでも生き残ると思われたが、現時点では消滅したと捉えて差し支えないだろう。どんなに伝統のある自動車メーカーでも、安泰とはいえない。また、環境対応や自動運転などの技術革新が求められるため、大きなグループでなければ生き残れない時代と言われている。その中で、子会社化、吸収合併をすることによりブランドは残っても、会社名としては消滅してしまうケースも出てくることだろ
う。
ずいぶん前の話になるが、日本でもスカイラインなどを生産していた「プリンス自動車」が「日産自動車」に吸収されたというケースはあったし、最近ではダイハツ工業がトヨタ自動車の完全子会社となり、上場廃止している。
また、三菱グループにあった三菱自動車は日産の傘下となり、すでにFUSOはダイムラーグループの一員である。
自動車メーカーの、そうした離合集散は起きると考えるのが妥当だ。とはいえ、日本の自動車メーカーが、いわゆる倒産したという話は聞かないのも事実だろう。しかし、元・自動車メーカーの廃業や倒産というのは起きていたりする。
2016年12月に解散した「ホープ」は、遊園地などで見られるバッテリーカーなどの遊具を作っていた会社だが、もともとは「ホープ自動車」という自動車メーカーだった。ちなみに、当時のブランド名は「ホープスター」で、3輪トラックなどを中心としていた。自動車メーカーとしての晩年に作った四輪駆動の軽自動車「ホープスターON」は、ビジネスとしては成立しなかったが、その製造権をスズキが買い取り、「ジムニー」の誕生につながったことで、知る人ぞ知る会社でもあった。